俺と俺様な彼女 〜10〜-2
「終わりました。」
「貸しなさい。」
「どうぞ。」
「ふ〜ん、この単元以外はまあまあできてるじゃない。」
「そうですか。」
「じゃあこの単元の基本問題やりなさい。」
「うぇぇ、もうですか?ちょっと休憩しましょうよ。」
「あのね、私の貴重な人生の時間を割いてるんだから休憩なんかなしよ。」
「マジですか!?」
「大体あんた欠点免れるだけじゃだめなんでしょ?だったら発展問題もしなきゃいけないんだから、休憩してたら時間が足りないわよ。」
「うぇぇーーー。」
「ほら、さっさとやる。」
「すいません、ご飯ご馳走になって。」
「いいのよ、数馬の勉強みてもらってるんだからこれぐらいしないと。」
あれから四時間、俺はノンストップで数学の問題を解き続けた。少しでも気を抜こうものなら先輩の拳がとんできた。普通女子がグーで殴るか?もし母さんが夕食の用意が出来たと言って来なかったら俺は今頃血を吐いて倒れていたかもしれない。
「あっ、これおいしいですね。」
「ああ、それはね、先に炒めるのがコツなのよ。」
「ああ、なるほど。」
「ふふ、私息子じゃなくて娘が欲しかったからなんだか娘が出来たみたいでうれしいわ。」
母さん、そういうことは息子がいる前で言わないで欲しい。リアルに凹むから。
「ただいま〜。」
「あっ、おかえりなさい。」
来たな、じじい。
「ん、誰か来てるのか?」
「保奈美さんが来てるのよ。」
「なに!?」
「どうも、お邪魔しています。」
「これはこれは、またどうして?」
「数馬の勉強見てもらってるのよ。」
「なに!?貴様、息子の分際で。」
あんたこそ何様なんだよ。
「すいませんね、ほんとこいつ馬鹿で。」
「先輩、相手しなくていいから。」
「お前は黙ってなさい。」
「俺のセリフだ、この野郎。ご馳走様、先輩行きましょう。」
「ええ、じゃあ、失礼します。」
「おい、馬鹿息子。」
「何だ?馬鹿親父。ごめん、先輩先行ってて。」
「・・・お前部屋で二人っきりだからといって保奈美さんに変なことするんじゃないぞ。」
「母さーん、親父の部屋の壁紙の裏に親父がへそくり隠してあるから。」
「なっ!?お前なんでそのことを!!」
「お父さん、どういうこと?」
「い、いや、あれは違うんだ。勝手にお金が入っていったというか・・・」
んなわけねーだろ、小学生でもまだましな言い訳するよ。ごちゃごちゃ言ってる親父を放って俺は二階に上がった。
・・・おっと、なんか飲み物でも持ってくか。なんかジュースとかあったかな。
台所に行こうとすると必死に母さんを止めようとする親父がいた。なんでこんな情けない親父なんだろ。
「先輩、っと、寝てる?」
疲れてんのかな。なんか勉強計画とか立ててくれてたからな。
「・・すぅ。」
・・・どんな憎たらしい奴でも寝顔は可愛いっていうけど本当だな。これで普段もっと優しかったらなぁ。天は二物を与えずというかなんというか。
「・・・」
・・・キ、キスとかしたら起きるかな?バレたら・・いや、少しだけなら。かすめる程度なら。俺からしたことは・・・一回あるけどあれはキスとは言えないか。い、いいよな、彼氏なんだし。それに親父があんなこと言うから。うん、そうそう、親父が悪いんだ。そういうことにしておこう。