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Twilight Closse
【青春 恋愛小説】

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Twilight Closse]T 〜すれ違い〜-1

「クランテイル豊穣の社」と言うその城塞を前に、俺はラーメン玉の入った袋のみを武器として立っていた。
今から突入するこの魔城に侵入する訳だが、今までと違って(と言ってもまだ三回しか入ってない)緊張してしまう。
因みに、このマンションが「クランテイル豊穣の社」と言う名前だった事はさっき西野に聞いた。
「チャンスは…一回のみ…」
世界をかけた戦い直前の主人公的な気分だ。「主人公ってツラい立場なんだな」と感じる。
実際はただの謝罪とお詫び。だが失敗すれば明日から何も上手く行かない気がする。
根拠は無いが、そんな気がする。

…ウダウダ考えても仕方がない。
「よし」
覚悟を決めて、まずは作戦段階1。
正門の突破である。
扉を開けて第一関門に侵入。今朝やったのと同じように、電話機みたいに並んだ数字板に902と打ち込む。
ガー…ブッ
繋がった。
「ああ、奥山?俺だ。開けてく…」
ブツッ
切られた。
…これは「入ってくるな」と言う意思表示だろうか?
やっぱり変な物を見られたのがよっぽどショックだったんだろうか?
いや、まだアウトじゃない。まだ作戦的には想定内だ。

…違う。絶対違うからな。ダメかも。いや、ネガティブに考えるな。もっとkool…
じゃなかった。coolになれ。あれ?koolだっけ?
ピンポーン…
自動ドアが開いた。
「あれ?」
開けてくれたのだ。奥山が。
何でだ?
さっきはいかにも拒絶する様な切り方をしたのに…
望んでいた展開にも関わらず、俺は何となく釈然としない。

あの時…
何だったか分からなかったけど、変な物を見られて泣きそうになってたはずだ。

確かに何か変だ。だが恐れてては何も動かない。
…「危険を犯す者が勝利する」だ。
俺は警戒しつつ、エレベーターで9階まで上がった。

豊穣の社F9。
目下、敵影無し。
エレベーターは途中で止まったり壊れたり爆発したりせず、ちゃんと俺を9階まで届けてくれた。
今のところ、狙撃、クレイモア地雷は無い。
いや、あったらむしろ困るが…何か罠臭い。
そそくさとドアまで歩き、そしてドア前インターホンを押し…
まさにその瞬間だった。
ガッッッ
「オブァ?!」
「!?」
ドアが俺を襲った。
いや、正確には奥山がドアを開けて、それが俺の鼻っ柱を強打したのだ。
衝撃、痛み、足元の力の喪失。
崩れ行く中、俺は確信した。
そうか…俺をこう招き入れたのは…これが…狙…い……
奥山がハッとした顔で俺に手を伸ばす。
ああ、ここで更にフィンガーを叩き込む訳か…そこまで思い詰めてたなんて…ゴメン
…奥……山…
ドサァッッッ
俺は倒れた。
「!、!」
声の出ない奥山が、俺を揺さぶった。
「お…くや…ま…」
震える手で、俺は鼻頭を押さえた。
「…濡れ…タオル…を…」
俺の情けないセリフに、奥山はすぐに部屋の中に消えた。
一瞬見えた奥山の顔は、昨日やこの前より分かりやすかった。とても慌てた顔をしてた。


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