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青いリボン
【青春 恋愛小説】

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青いリボン-5

「どうしたの、こうちゃん? 変だよ。あ、やっぱり怒ってる?」

俺は彼女の問いに答えず、真っ直ぐ目を見てこう言った。

「あの時の答えを言うよ。」

「……え?」

「俺も好きだ。………蓮(れん)。」

俺はポケットの物を取り出して彼女に見せた。

「うそ……」

彼女の目から、大粒の涙がこぼれ落ちた。



7年前━━
翌日に「母の日」を控え、俺は母さんへのプレゼントを買いに街へ出た。
何を買うかは決めていた。
バレンタインにいつも母さんから貰うチョコレート。
毎年お花じゃ芸が無いなんて考えた俺は、こつこつ溜めた小遣いでちょっと高価なチョコをプレゼントしようとした。
デパートで吟味した結果、2,000円の生チョコに決めた。
決め手は俺の大好きな「青」のリボンで包装されているから。

その帰り道。
通りの公園で一人ベンチに女の子が佇んでいた。その子は同じクラスの子だった。

「小山さん、何してるの?」
「こうちゃん…」

小山蓮。おかっぱ頭でメガネ…。俺のことを『こうちゃん』とあだ名で呼ぶ、至って大人しい女の子。

「こうちゃん、あのね……ううん、なんでもない」

「? じゃあ行くね。」

「……待って!」

振り向くと彼女は顔を真っ赤にして俺を見ていた。そして意を決したようにこう言った。

「好き! こうちゃんのことずっと好きだった!」


その頃の俺は「好き」って何?てくらい子どもだった。
どうしたらいいのかわからず、とにかく一刻も早くその場から逃げ出したい気分だった。
ただ、何も言わずに逃げてしまえば彼女が傷付く。かと言って告白にどう答えたらいいかわからない。

ほぼパニック状態の俺は、手に下げていた袋から今日買ったチョコを取り出し、包装紙をくるんでいた青いリボンを外して彼女に手渡した。

「ごめん。それあげるから」
そして俺は逃げた。
なぜそんなことをしてしまったのかは覚えていない。ただ言えることは、あの頃の俺は今と変わらぬ馬鹿なガキだった。

それから、休み明けの学校に蓮は来なかった。そして朝の学級会で彼女が転校していったこと知った。

俺は激しく後悔した。
蓮は転校間近の休日にたまたま俺と会った。これは蓮にとって運命的とすら言える。
彼女は俺のことがずっと好きだったと言うのだから。
だがその想いを俺は理解できなかった。
しばらくの間、蓮のことを考える夜が続いたが、今はすっかりそのことを忘れていた。
しかし今、目の前にその蓮がいる。


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