彼女の手料理-1
「どうしたの?女の子みたいなことして」
「普段の男っぽさは演技。ヒサくんが女々しいから」
照れ隠しの憎まれ口は、あっさりと一蹴される。本当はそりゃあもう卒倒しそうなくらい嬉しい。放置プレイの得意な優真が、手料理を振る舞ってくれるなんて。
僕はにやけるのを堪えながら、華やかなテーブルの前に座った。
「いただきます」
パスタにサラダにスペアリブ。
僕の好物を選ばないところが彼女らしいけれど、全然問題無い。例え相当まずくたって、十分嬉しい。
僕はさっそくパスタに噛り付いた。
「うまっ!」
正直、少し心配だったけれど、ひいき目無しでもかなり旨い。
「当然ね」
優真は表情一つ変えずに頷く。
「でも、なんで?急に料理なんて」
スペアリブを頬張りながら尋ねると、彼女はじっと僕を見つめた。
「痩せたでしょ」
「へ?」
「ご飯、ちゃんと食べてないんじゃない?」
思わず言葉を失う。
確かに、最近は食欲が無くてろくな食事を摂っていなかった。だけど、痩せたと言っても二、三キロの話で、そうそう気付かれるものではない。
「なんで…わかったの?」
「見ればわかるよ」
優真は当たり前のように言う。
そんなそぶりは全く見せないけれど、彼女は僕を想ってくれているらしい。
「私が作れば食べるかなと思って」
「優真…」
胸がいっぱいで言葉に詰まっていると、彼女は悪戯っぽく微笑んで、
「ヒサくん、私のこと大好きだからさ」
と言った。
悔しいけれど、素直に認めるほかない。
僕は男っぽくて放置プレイが得意で、でも、誰よりも優しい彼女に夢中なのだ。
「残さず食べるよ。大好きな優真の手料理なら」
僕が言うと、彼女は『当然ね』と頷いた。