いつもの帰り道-1
俺の名前は、斉藤・ハーフ・健二。今年から高3だ。
母さんは神戸生まれの日本人だけど、親父はアメリカ人なんだ。
男友達からは大体「健二」って呼ばれてるよ。
〜新学期の始まり〜
『え〜〜、では、今学期の始業にあたって、野田校長先生から一言、頂きます。』と教頭。
お言葉の通り、今日から新学期。今始業式が始まったところだ。
『やはり、新しい年度を迎えまして、一年生は二年生、二年生は三年生と、それぞれ一歩ずつ大人へと近づいてゆくわけでありまして…』
あ〜あ、この話いつまで聴かされるんだろう。
…お!終わるか?
『…では今年度も気を引き締めていきましょう。ではこれで始業式を終わります。あ、』
『んへ…?』
今、言ったよね。
始業式はこの校長のサプライズ発言で幕を閉じた。
勢いで言っちゃったんだろう。あの後『やっちゃった』みたいな顔で教頭の顔見てたもんな〜。かわいそ。
まぁいいや、おかげ早く帰れそうだし。
『…では礼!!』
「「「さぁなら」」」
新しいクラスの顔合わせみたいなのも終わって、やっと帰れる時間になった。
「あんま仲良いやつとなれなかったな…」
事実新しいクラスには顔を見たことがない生徒が半分以上いた。
「よぅケンジっ」
「おぉ、並次」
こいつは安藤並次[へいじ]。高一の頃、一番仲がよかった友達だ。友達も多い。
「昼、家で食べはんの?」
「いやぁ、うち今両親広島に旅行行ってるんですわ」
「そうでしたな」
「そうでんがな」
「そないやったら、帰りチャーシュー力で食べて帰りまへんか」
チャーシュー力[ちゃーしゅーりき]とは、地元でもあんまり有名ではないが、味はそこそこ価格は300円でラーメン一杯食べられるラーメン屋だ。
「ちょうど良かったですわ」
そんな何気ない話をしながら、2時間後−
「おっさん、ラーメン、ごっそーさん」
「兄ちゃんらいっつもよう来てくれるから二つで700円でええわ〜」
「高なっとるやないか!」
「どんだけ店苦しいねん」
「嘘や嘘や。二つで80円でええわ。」
「「安いな、また」」
「ほいなら、また食べに行きまひょう、ケンジはん」
「そうですな、ほんなら、今日はおおきにー、また明日です〜」
ふ〜ぅ、まだ1時か。帰って何しようかな?
ていうか、並次のやつ、前からあんなしゃべり方だったかなぁ…。
「ッ!?」
俺は目の前の光景に目を疑った。
「なぁ〜、姉ェちゃん」
「やめてください」
(たぶん)同じ高校の女子が、昼間っから酔っ払ったおっさんに絡まれている。
…どどとどうしよう。け、警察に通報しようか。いや、そんなことしてる間に…。俺が行くべきなのか!でもアイツはどう見ても強い。「勝ちたい!」っという闘志が全面に押し出されている。まさに「スモールベースボール」だ!
俺は、テンパり過ぎていたのか、頭の中が混乱し、ショートしかけていた。
いや、そんなこと考えている時間はないぞ…!
次の瞬間、俺はヤツの方へと猛突進していた。だいぶ小股で。
そして心の中で叫び、自分を鼓舞していた。