いつもの帰り道-2
「頑張れ真介!お前ならできる。いつものようにやるだけだ!」
…俺は緊張のあまり、自分の名前さえ間違えていた。
「あ、祐二!!」
女子生徒がこっちを向いて呼んでいる。
一瞬、男の手が緩む。その隙を見て彼女は男をくぐり抜け、こっちへ走って向かって来る。
「祐二ー、助けて」
酔っ払いのギクッとした顔。
彼女は無事だ。彼女は助かったんだ!俺が助けたんだ!!
…ちょと待て。……
祐二てだれ?
おれ、祐二じゃない。
おれ、ゆうじ、知らない。
彼女が呼んでいたのは俺じゃないんだ。
俺じゃなく、俺の後ろから助けを差し伸べに来た彼氏なんだ!
俺は、とっさの判断で彼女の方に向かって行きながらも、他人のふりをし、彼女をかなり大げさによけ、「僕は他人ですよー、ちょっと学校帰りにランニングをしてた学生ですよー」てな具合に、その場所を通り過ぎた。
完全に通り過ぎ、少し離れたところで、彼女の方を見る。
…俺の後ろには誰もいなかったようだ。彼女も軽くランニングしてるような走り方でごまかしている。
それを不思議そうに見ている酔っ払いの男。
「……あ、そういうこと!?」
やっと理解した俺。
俺、ダメね。
なんていうか、そういうのうといんですわ。
あきまへん。
斎藤・ハーフ・健二、いっこもモテまへんがな。