刃に心《第−1話・剣に誓った初恋〜後編》-7
「お願いだから…」
寂しくてしかたがない。
苦しくてしかたがない。
辛くてしかたがない。
「もう少しだけ…此所にいてくれぬか…」
寂しくて…苦しくて…辛くて…
「私は…」
好きで…
「私は…」
好きで…
「私は…ずっと、ずっと疾風と一緒にいたい!」
目の前にいる者が好きで、好きで仕方がなかった。
「だから…だからぁ…」
さらに涙が溢れる。
ポロポロと感情の塊が落ちていく。
疾風はそっと楓の隣りに座った。
「…疾風は…私と一緒にいたいと思わぬのか…?」
楓は涙を流したまま疾風を見つめた。
それだけで胸は張り裂けそうに痛む。
「おれもいたいよ…」
疾風は楓と同じように辛そうな表情とともに言った。
「でも…」
「………判っておる…これは私の我が儘だ…すまぬ…」
楓の声が静かに響く。
「疾風…」
別れは避けられないことだと判っている。
だから、楓はこのまま別れたくはなかった。
「最後に頼みがある。目を閉じてくれ…」
疾風は不思議に思いながらも目を閉じた。
すると楓はゆっくりと疾風に顔を近付け、言った。
「ありがとう…」
疾風は頬に柔らかいものを感じて、目を開けた。
「お、おやすみ…」
「あ、ああ…おや…すみ……」
楓は再び布団を被ると、疾風に背を向けた。
疾風はふらふらと楓の部屋を出た。
「えっ…何…おれ…何されたんだ……」
夜風が火照る顔を冷ますように流れていく。
判らない…判らない…
訳が判らない…
ただ、異様なほど頬が熱かった。