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―滲む世界―
【悲恋 恋愛小説】

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―滲む世界―-2

目をあけると朝日が目に入った。…俺の気持ちは落ち着いていた。きっと時間が俺を癒してくれるだろう。だからゆっくり…少しづつ…。

『………。』

俺は机に向かった。別れの原因はこれのせいかも知れない。俺の夢。……俺の夢は小説家。けれど半人前にもなっていない。まだただの素人。だから彼女には重かったのかもしれない。


『………。』

机の上にはノートが一冊。俺はいつもこのノートに物語を書いていた。普通の原稿用紙ではなく、なぜかこのノートに。
ペンを持ち、目を一瞬閉じて字を綴り始めた。





「滲む君」



「始まりはいつだったろうか?よく覚えていないがきっと彼女とは気付かないうちに―――」

違う、これは小説じゃない。俺は消しゴムをとり、乱暴に字を消してく。
これでは自分の気持ちを吐き出しているだけだ。
ペンを置き、目を閉じてみる。よく考えろよ。なんで彼女の顔が浮かぶ。今はお前の事を受け止めている時間じゃない。
俺は小説を書くんだ。
また泣いてしまうだろ。
出てこないでおくれ。



「滲む君」


「世界が一瞬ぼやける。そしてすぐまた……それぞれの形を取り戻そうとする。けれど世界は変わらない。何故だろう?何故こんなにも君が滲んでみえるのだろう??
答は簡単だった。俺は泣いていた。俺の涙がこの世界をぼやけさせていた。おかげで君の顔も解らない。

――泣き顔?笑顔?

どっちなんだろう?今の僕には解らない。涙が止むまでは。――」



……俺は決めた。今は自分の気持ちをこの物語にぶつけよう。文が文じゃなくなってもいい。小説じゃなくなっても、もうそれでいい。
なにかにこの悲しみをぶつけたくて。

なにかをすることで彼女を忘れたくて。

こんな俺に小説なんて書けない。今の俺にはそこまで心が安定してない。もう少し後で……もう少したって落ち着いたらちゃんとした物語を書き始めよう。

今は自分の気持ちをこのノートにぶつけよう。



「――彼女はいつも明るくて――」

涙でノートがグシャグシャになってもいい。

「――口癖は――」

上手くペンが持てなくてもいい。


「――『ずっと一緒だよ』――」





「一つ望みが叶うなら、君にもう一度だけ会いたい。……会ってちゃんと…ありがとうとさよならを言いたい。

滲む君じゃなく、いつもみたいな無邪気な君に。」


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