刃に心《第13話・サイレントキラー〜無音の殺し屋》-9
「な、なぁ…疾風、アタシも一緒にいい?」
「いいですよ」
「希早紀、一緒に食べないか?」
「うん♪今行くよ♪」
「楓は?」
「今、手を洗いに行ってる」
次第に辺りが騒がしくなってくる。
「……此所いい…?」
ピタリと喧騒が止んだ。
刃梛枷がアンパンと牛乳を持って、疾風の隣りに立っていた。
「ああ、いいよ」
少々、驚いたものの疾風は笑顔で言った。
それを見届けると刃梛枷は疾風の隣りに座った。
「あああああ!」
途端に響く楓の叫び。
「そ、そこは私の席だ!」
「……貴女はいなかった…」
「ぐ…」
言葉に詰まる楓を尻目に刃梛枷はアンパンの包みを開いた。
「疾風、GJ♪」
彼方が喜びの悲鳴をあげる。
「疾風君、どうやって落としたの?攻略法は?」
「プレゼント?」
「デート?」
詰め寄る仲間。
(…殺し合いです…)
引きつった笑みを浮かべることしか出来ない。
すると刃梛枷が口を開いた。
「……私はこの人に助けられた…」
さらに沈黙。
「えっ、何々その展開?」
「チクショー!疾風、手ぇ出したらぶっ殺すって言ったじゃねえか!ピエロか?俺はPierrotなのかああ!」
「だからそれは…」
刃梛枷が小さく首を横に振る。
「……私は助けられた…」
「だから…」
「……助けられた…」
「…判ったよ…助けました」
疾風は嘆息して弁当を開いた。
刃梛枷がそう思っているのならそれで良いのだろう。