刃に心《第13話・サイレントキラー〜無音の殺し屋》-8
「……貴方が父───頭領にああ言ったから私は一族から抜けることが出来た…」
「でも、それは黒鵺が真剣に訴えたから…」
刃梛枷は小さく首を振った。
「……それは貴方の言葉があったからこそ………私は貴方に助けられた………貴方は私の恩人…」
「恩人なんて大袈裟な…」
照れくさそうに頬を掻く。それを見た楓は…
「何やら楽しそうだな♪」
ギュムッ。
「いだッ!?」
「ふん…」
先程から抓られてばかりの疾風。しかし鈍感なため、何故抓られているのか判らない。
「……本当にありがとう…」
そう頭を下げて、刃梛枷は病室を後にしようとした。
「黒鵺」
それを疾風が呼び止める。
「また、学校でな」
相変わらずの無表情でコクリと首肯。
病室を出ようとして、刃梛枷は急に止まった。
「どうした?」
「……私は黒鵺との縁を切った………今は便宜上黒鵺を名乗っているだけ………だから…」
刃梛枷は疾風の目を見た。
「刃梛枷でいい」
そして、そのまま立ち去っていった。
「………」
ギュムッ。
「痛ッ!!」
ギリギリ…
「ちょっ…やめ…そこからさらに捩りは…いだだだだだだだだだ!!変色してる!紫になってる!」
楓の怒りはその後、疾風がナースコールを押すまで続けられた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「へぇ〜、そんなことがねぇ…」
武慶が刃梛枷の背中を見て言った。
「このことは…」
「判ってるよ。何年、親友やってると思ってんだ」
疾風と武慶が笑う。
「その後の刃梛枷はどう?俺より先に退院したからさ」
「相変わらずだ。誰とも喋らないし、関わらない」
疾風は少し残念に思った。もしかしたら、何か変わったかと思ったのだが…
「…気長にいくか…」
「そうだな」
「おーい!シイタケ、疾風、飯食おうぜ!」
彼方と間宮兄弟が弁当箱片手にやって来た。