刃に心《第13話・サイレントキラー〜無音の殺し屋》-6
「つ、月路先輩!?」
「やっと気付いてくれましたねぇ♪」
「てか、何してるんですか!?此所は何処なんですか!?」
「此所は月路医院ですよ♪私は簡単なお手伝いナースです♪」
「何なんですかお手伝いナースって!で、月路医院…ってことは……」
「はい♪私の父と母が経営してます♪」
疾風がピクピクと口の端を引きつらせていると、病室のドアが開いた。
「疾風が起きたとは本当か!?」
楓が額にうっすらと汗を浮かべながら飛び込んで来た。
そして、無言になる。
現在の状況…
上半身裸の疾風に身を寄せる朧。
「………」
データ読み込み中。
「…うふ♪」
朧はにんまりと笑うと疾風の首に手を回し、さらにべったりと頬をすり寄せる。
「なっ!せ、先輩!」
疾風が赤面する。ぶちんと何かが切れるような音が聞こえた。
「○※♪∀∇───!!!!!!!!」
目尻に涙を溜めながら、楓が意味不明の言葉を叫ぶ。
そして、手刀が…
「ガフッ!」
疾風の胸元にヒット。
赤々とした痣がくっきりと付き、疾風はゆっくりと安らかなまどろみの中に戻っていった…
◆◇◆◇◆◇◆◇
「…いきなり何するだよ…」
一時間後、疾風は再び目覚めた。
担当医からの説明では、出血多量で丸一日昏睡状態に陥ってたらしい。そこから、回復した途端、激しいショック…具体的には楓の手刀によって、さらに一時間気絶していたそうだ。
「五月蠅い!私は悪くない!悪いのは朧殿とお前だ!」
「俺が何したんだよ?」
「デレデレしておった!イチャイチャしておった!ベタベタしておった!!」
楓が吠える。
赤面はしたけど、デレデレも、イチャイチャも、ベタベタも…多分していなかったはずだ…
それに何故そんなに怒る?
疾風は疑問を持ちつつ、過去を振り返った。
「…もしかして…何にも言わなかったことを怒ってる?」
「…怒ってないとでも?」
青筋を立てて楓はにこやかな笑みを浮かべた。
「私に嘘を吐いて、挙句の果てには才蔵殿からの連絡で此所に来てみればお前は血まみれで倒れておる。そんな状況で怒ってないとでも言うのか?私がどれだけ心配したか判っておるのか?」
「………すみません」
疾風は素直に謝った。
すると楓が疾風の手をそっと握る。
「…本当に…心配したのだからな…」
泣きそうな楓の顔を見て、疾風は何も言わず楓の手を握り返した。