「本気の恋。はじめました。(上)」-1
夜の街は今日も動きだす…
「美鈴ちゃんご指名入ったよ〜」
「はぁい」
私は美鈴。
まぁ源氏名だけど。
ここ、クラブファイブの人気ホステスだ。
まだ入って二ヵ月くらいで一気にNO2まで上り詰めた。
でも私はこの世界にどっぷりつかる気はない。
ここに入った動機は…別れた男がキャバ嬢嫌いだったからだ。
嫌いな職業をあえてやって、反抗したかったのだ。
終わった関係だけど…
「あ!ナツくん!来てくれたんだ〜」
「あ〜美鈴ちゃんの為なら毎日きちゃうよ〜」
そんな事を言いながら外で会う様しむけてくるのだ。男ってのはこんなもんか。最近別れたせいもあり、私は男に対して絶望していた。
今はこの疑似恋愛が私にはお似合いだよね……
『え〜わかんなぁい〜』
『答え聴きたい奴だけ俺のとこきな。まぁ負け犬になるけどね』
『むかつく〜』
見ると平日なのでお客様がぽつりぽつりとしかいなく、ボーイの山下さんと他の女の子達はクイズをやっていた。
「美鈴ちゃんもあそこ混ざりたいの?じーっと見ちゃって」
「え?違う違う!」
「あのボーイさん女の子に人気らしいよ」
ナツくんはここにかなり前から通ってたらしく、店事情は私より詳しい。
女の子にも知り合いはいっぱいいるみたいだし…
不思議な人だ。
「なんで?」
「普段冷たいけど、さりげなく優しくしてくれたりするし、でも女に媚びないトコが人気みたいよ」
「ナツくんがあの人好きみたいな言い方〜」
「僕はホモじゃないです。」
ただ、毒舌なだけじゃん。アホらしい。
「ただ、あの人すごい告白されるのに全部断るらしいよ」
「ホモなんじゃないの?」「あはは〜おもしろいっ」
そんな話は続き、ナツくんはそれから三時間くらいいて会計を済ませ様と席を立つ…
レジはボーイの仕事で運悪く?山下さんがついた。
「二人で山下くんの話してたんだよね〜」
「え?どんな話ですか?」「美鈴ちゃんにきいて〜さいなら〜」
ナツくんに、にこやかに手を振る。
「なんの話?」
「いやっクイズ楽しそうだなって」
「それだけ?なんか悪口いったんじゃないの?俺の」「いや、女から見て魅力あるなぁって」
「言ってないべ」
「なんで告白されるのに断るのかなぁって」
とっさだったもんでまずい質問をしてしまった…
「キャバ嬢が嫌いだから」
その言葉が胸にささった。元カレに言われてるみたいで…
私の今やっている事は間違ってるって。
「美鈴〜おつ〜」
この店で仲良しのまことが我に返してくれた。