「本気の恋。はじめました。(上)」-6
「おはようございま〜す」「おはよぅ」
今日は山下さんだけか?
「山下さんだけですか?」「いや林田がくるよ。」
新人ボーイくんだ。
しかし36才らしい。
色んな人が来るなぁ。
「美鈴おはよっ」 「おはよ〜」
いつもの挨拶を済ませ待機につく。
「いらっしゃいませぇ」
「林田さん声うわずってるよ」
「ね!緊張してる」
「みっみすすさんっご指名ですっ」
「はぁい。」
新人の林田さんに気をとられ、来たお客に目がいかなかったのがまずかった…
「よぅ」
「あっあきや…」
そこにいたのは元カレだったのだ…
「なんで来たの?」
「メール来ないから」
「なら意味わかるでしょ?帰って」
「戻れないのか?」
「そうだよ!自分のした事わかってんの?」
思わず声が大きくなる。
店の子達は心配そうにこっちを見る…
「もう、俺の事好きじゃないの?」
その質問をされた時、はっきりと私は彼に対する気持ちが無くなっていた事に気付いた…
「うん。もう会わない。連絡もしない。帰って。」
「……わかったよ。最後に言っていい?」
「なに?」
「男に媚びる最低女」
あきやは、吐き捨てる様に言葉をなげかけ席を立った。
「大丈夫?美鈴…」
「うん…」
しばらく待機で泣いていた私にみんなが心配して、声をかけてくれた。
「平気か?」
「山下さん…」
「団体入ったから美鈴以外席ついて」
みんなは私を気に掛けながら席に向かう…
「あれが元カレだったんだな」 「山下さん…キャバ嬢ってやっぱり最低ですか?」
「そう言われた?」
「はい。」
「自分がそれでも頑張ればそれはそれで一つの職業なんじゃねーの?」
「でも山下さんも嫌いな職業でしょ?」
「嫌いな職業だけどそいつら個人はいい奴だと思うよ」
「じゃあなんで告白されるのに…」
「ははっまた同じ質問?まぁ…好きになれないからかな」
気を遣ったのか前とは違う答えだ。
「キャバだからじゃないんですか?」
「前はそう思ってたけど今は違うかな」
「よくわからないです」
「美鈴は頑張ってるよ」
山下さんは少し笑って仕事に戻った。私はなんか救われた気がした…
頑張ってるよね?
私頑張ってるよね?
「みすずさんっご指名ですっ」
「林田さんうわずってますよ?」
あれから少し落ち着いて接客も出来る様になった。
「あっナツくん…」
「やぁ」
「最近ほとんど毎日来てくれるね!」
「今日は告白をしに来ました。」
「え?」
「付き合って下さい」
キャバ嬢を本気になる人も少なくはない。
お客と付き合う人だっているし、有りだとは思う…でも…