「本気の恋。はじめました。(上)」-3
冗談じゃない。
もう会いたくない…
もう傷つきたくない…
「美鈴ちゃん?どうした?」
「いやです。」
「いやですだけじゃわかんないよ〜」
鈴木さんが驚いて様子を見にくる。
「あそこにはつけません…」
声が震える。
「でも新規なのに指名したいらしいんだよ。美鈴ちゃんを。かわいいからって」「いやですっ」
「わがままは困るよ〜」
「鈴木さんお客さんに断って置きましたよ」
「え!何やっちゃったの山下?」
「あんなに嫌がってるんだから無理でしょ」
山下さん?の声が聞こえる…
「でもせっかくの指名…」「楽しませられない状態でつけても意味ないです。」「………わかったよ」
鈴木さんは諦めたのか声をすぼめた。
「指名にメール打っときな」
「え?」
山下さんがドア越しに囁く。
「あいつらが帰るまで出さないでやるから。指名来たら困るだろ」
「あっ…ありがとう」
「帰ったら知らせてやる」
なんだか涙が出た。
安心感なのか。
恐怖なのか。
感謝からなのかは…わからないけど。
その集団は四時間いたらしく。私は結局一時間しか働かなかった。
「美鈴ちゃん残れる?あと、山下も。」
鈴木さんに呼ばれ、みんなが帰った後私達は残された。
「今日みたいな事が今後あったらもう目はつぶらないから。」
「すいません。」
しゅんとなる私とは別に、山下さんは凛としていた。
「僕は何度でもやりますから。送りあるんで失礼します。」
そのまま席を立ち去っていってしまう…
「あいつには困ったな。自分が決めると曲げない。いい迷惑だ。」
チッと舌打ちが聞こえた。初めて見た鈴木さんの恐い一面だった…
「おはようございます」
「おはよぅ美鈴ちゃん」
一日立つといつもの鈴木さんだった。
「おはよう」
「山下さん昨日はありがとう」
「気にしないでいいよ。俺のわがままだから」
ドキッ
………いや。
「これで女を落とすんだな」
「は?」
「なんでもないでーす」
確かに…モテそうな人だと思った。
でも女を落とす手なのかなぁ?
お水の男は恐い恐いっ!