fantasy ability・0‐皇希の過去‐-1
‐幻光館学校から離れたとあるアパート‐
〈ピピピピピピピピ‥‥ガチャ〉
「ふわぁ。‥‥眠い!」
目覚まし時計の音で皇希は目覚めた。皇希は欠伸をかきながら立ち上がり、寝室を出ていった。
今日は幻光館学校の入学式だった。時計の短針は6、長針は12をそれぞれ指していた。
「‥‥‥」
皇希は無言でトイレ、顔洗いと順にこなした。
「さて‥‥」
皇希は寝室とは違う部屋に入っていった。そこには、なんと二つの仏壇があった。
皇希は正座で一つ目の仏壇の前に座る。そして、両手を合わせて目を閉じた。
《‥‥父さん。俺は貴方のような強い自分を持ちます。だから、安心してお眠り下さい。》
皇希は直ぐに、隣の二つ目の仏壇に正座で座った。やはり、両手を合わせて目を閉じた。
《‥‥母さん。貴女から頂いた愛情を忘れません。なので、父さんと一緒にお眠り下さい。》
‥‥そう、皇希の両親の仏壇だった。四年前の出来事だった。両親の二人で買い物帰りに通り魔による無差別殺人であった。皇希の両親は即死だったらしい。
すると、皇希は両目から涙を流していた。
「う、‥ひっく、‥うぅ‥‥」
皇希は昔を思い出していたのだ。
‐皇希五歳‐
三人で食卓用の四角いテーブルで夕食を食べている。
「ねぇねぇ、パパ、ママ。どうして僕の背中には、文字が書いてあるの?」
「そ、それは‥‥」
皇希の突然の一言で、母親は動揺した。
「皇希よ。それはきっと“天からの贈り物”だよ。」
「‥おくり‥もの‥?」
父親の一言に子供の皇希は首をかしげながら言った。
「この際、はっきり言っておこう。‥‥皇希よ、君は私たちの本当の子供では無い!」
「えっ!?」
父親の突然の言葉に子供の皇希は泣きそうになった。
「すまない。今まで黙っていて‥‥」
「‥う‥う‥うわぁ〜ん!!」
とうとう泣き出した皇希。しかし、父親は更に追い討ちのように喋る。
「実は私たちは子供が出来なかった。諦めていたのだ。しかし、五年前のある日、妻と歩いていた時に、皇希‥‥君が空から降ってきた。最初は信じられなかった。しかし、確かな何かがあった。だから思わず、私は皇希を‥‥天からの贈り物を受け取った。」
「‥‥う‥うぅ‥」
子供の皇希は少しずつ泣き止み始めた。そして、父親の言葉をまじまじと聞き始めた。
「それから、私たちは救われたよ。皇希によってね。私は君の為に仕事を始めた。妻は君を一生懸命になって愛した。こんな駄目な自分たちを支えてくれる子供が居るだけで、人間(ひと)はこんなに変われると思い知らされたよ。」
母親も首を振る。