fantasy ability・0‐皇希の過去‐-3
‐月日は流れて、皇希十二歳‐
事件は起こった。両親の急な死だった。その日、皇希は部屋から出ずに泣いていた。
「皇?居るか?」
仁が部屋の前に居た。
〈ガチャ!ガチャ!‥ドンドン!〉
「おい!せめて返事だけでもしろよ!」
仁は扉をこじ開けようとするが、出来なかった。ある意味、織音になれば楽に出来たかも知れない。しかし、それだと仁も「自分は人間じゃないだ。」と証明してしまっては、今の皇希に対して追い討ちをかけるかもしれないので、やめたらしい。すると、中から声が聞こえてきた。
「‥‥いる‥よ‥」
確かに皇希の声だった。しかし、かなりかすれていた。相当、泣いたのであろう。仁は扉を背に座る。
「皇。‥‥生きてて良かった。」
「‥‥‥」
「黙っていてもいい。とりあえず、聞くだけ聞いてくれ。皇、お前はこのまま死ぬ気なのか?だったら、間違っているぜ?」
「‥‥‥」
「君は父から何を貰った?母からは何だ?俺は思う。‥‥お前は父から全てに屈しない強い心を!母からは全てを愛する優しき心を!‥‥違うか?」
「‥‥‥」
「もし死ぬというのなら、止めはしない。しかし、後悔するのはお前だ!それに、お前に救われた両親は悲しむだろう!それでも、いいと言うなら止めはしない。‥‥じゃあな。」
仁は立ち上がり、帰ろうとした。
〈ガチャ!〉
仁は後ろに振り向く。そこには、目を真っ赤にさせた皇希が立っていた。
「たくっ。世話がかかる奴だな。」
「う、うるさい!」
「‥‥で、気持ちは落ち着いたか?」
「ああ、ありがとうな。いつもすまない。」
「ふっ、いいって事よ。ま、後で何か奢れよ?」
「ああ。」
皇希は笑顔で笑い始めた。仁も誘われて笑い始めた。