You're my sunshine-1
「好きだ」
「…………… ごめんなさい」
俯きながらそう言った瞬間、彼の喉がひゅっと鳴り、息を呑んだ音が聞こえた。
「私、『好き』てよく分からないの…。だから付き合えない。ごめんなさい」
「………………わかった……俺達、これからも……友達…だよな?」
無理矢理笑顔を作っているのが分かる彼。
申し訳なさと、彼の以前と変わらぬ優しさへの感謝で涙が溢れ出したが、それを拭うことなく、私は声も出せずにうんうんと壊れた玩具のように首を振った。
あれから少し間を空け、彼はじゃあなと言い教室から去って行った。
ガランとした教室に一人ポツンと残った私。
彼がどんな表情をしていたかは、涙で目の前がくすんで分からなかった。
悲しいのはきっと彼の方、なのに、私の涙は止まることを忘れたかのように流れ続ける。
誰もいない教室の中、とりあえず手近な椅子に座り窓の外に広がる暮れゆく景色を見つめ、そのまま感傷に浸りながら静かに涙を流した。
どれほど時間が経ったのだろう。1時間かもしれないし、もしかしたら10分かもしれない。
ただ、朱に染められていた街は、すっかり夜の帳に包まれていた。
涙は既に止まり、私はただぼんやり宙を眺めた。
ガラッ
ハッとして扉の方を振り返った。
しまった…
振り返ってから、自分が先程泣いていたため目が腫れているだろうことに気付き、すぐに視線を再び外へと向けた。
…… 目が腫れているなんてのは言い訳で、誰かに弱い自分を見せたくなかったのかもしれない。
「まだ残ってたの?」
低く柔らかく響く心地良いテノール。
未智(ミチ)だ… 。
未智とは高校に入ってから知り合った。
入学したてで、見知らぬクラスメートの中緊張してた私に、偶然席が隣だった彼が話し掛けてくれた。
思いの外馬が合い、それ以来、よく一緒にいる。
「うん」
私は振り向かないまま、返事をした。
「……名雪(ナユ)…何かあった?」
「何でもないよ」
泣いていたのを必死に隠そうと試みる。
そんな私の努力を知ってか知らずか、未智はくるりと私の前に回り込み、顔を覗き込んできた。