初雪 〜美しい人続編〜-2
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あの日……
放課後の教室で俺は恋敵の生徒会長と話していた。
『副会長もお前に惚れてるんじゃねぇの?』
なんでそんな言葉を口にしてしまったんだろう。
俺は、君の恋が成就するのを見たかったのかもしれない。
悲しいけれど、君の本当の笑顔が見たかったんだ。
たとえ相手が俺で無くても。
端正な顔の生徒会長は、僅かに眉根を寄せた。
『勘弁してくれよ、一緒に歩くとこ想像してみろよ。みっともない』
気が付くと俺は生徒会長のの肩を掴んでいた。
瞬間、右手に鈍い痛みを感じる。
生徒会長が壁際まで転った。
『やめて』
君の声に俺は我に返った。
教室の入り口に青ざめた顔の君がいた。
なんでこんなとこにいるんだよ。
また君は苦しむのか。
君がこれ以上傷付くのは見たくないのに。
ごめん。
ごめん。
君を見ることなく生徒会長が教室を出て行った。
うつむく君の瞳から涙が溢れ落ちた。
『もう、こんな体嫌だ。
なんでよ、なんで私だけ、なんで私なのよ、なんで……
足も心も、私の自由になるものなんてなんにもない
……もう、絶対に誰かを好きになったりしない』
俺は小さく君の名を呼ぶ。
涙を拭うこともせず、君は俺を真っ直ぐに見る。
『あんたなんか大嫌い!大嫌い!』
君の拳が俺の胸に何度も振り下ろされる。
君が泣くのを初めて見たよ。
そっと抱き締めた君の躯はとても熱くて、俺も泣きたくなった。
きっと俺にはわからないエネルギーが君の小さな躯の中で炎を上げているんだ。