ケイと圭介の事情(リレー完全編集版)-43
「やっとこの二人も決着がついたな。ったく、時間のかかる奴らだぜ。よかったな、榎本さん」
二人の様子を陰から見守っていた慎也が独り呟くと嬉しそうな笑顔でその場から立ち去ったのだった。
「きゃあーーっ!」
「ダメ! マジ怖いっ」
智香のクラスが企画したお化け屋敷からただならぬ悲鳴が聞こえてくる。
悲鳴の主はケイと香織だった。
二人がここにいるのはそれなりに理由がある。
先程、ステージの件で荒れていた香織をたまたま労いにきた智香が見かねてケイと香織をステージ衣装のまま強引に連れてきたのだ。
「怖い怖い怖いっ!!」
「てか、これ学園祭のお化け屋敷のレベルじゃないって!」
以外と素直に怖がり、怖いを連発する香織に対しケイは動揺しながら訳のわからない分析を口走っていた。
………………
「いやぁ、すごく楽しかったねぇ、ケイ」
「そ、そお? 私は香織ちゃんがすごく怖がってた様に見えたけど…」
少し疲れた顔のケイがそう言うと、香織は笑顔でケイの腕に抱きつき答えた。
「お化け屋敷なんて、怖がるイコール楽しむってことじゃない。それに今日は学園祭なんだし多少ハメを外してもOKでしょ」
いくら学園祭とはいえステージ衣装を着た美形の女の子二人、正確には女の子一人と女装した男の子一人の内訳だがそんな二人がイチャつく姿は周りからも目を惹くものがあった。
ケイと香織のルックスと服装のせいもあってか、何人かの男子生徒達がケイ達に声をかけようとしたが全て香織に撃退された。
しかし、声をかけてきたのは男子だけではなく女子も声をかけてきたのだった。
いくら香織でも流石に女子に手を上げることはなく、ケイと一緒にそれなりに話し相手になったのだった。
ただ香織が気になったことが一つあり、ケイに話しかけてきた女子生徒は例外なく頬を朱に染めていたことだった。
話の内容としてはモデルの仕事と今日のライブに対しての称賛が殆どだったのが二人にとって救いだったかもしれない。
こんなことを行く先々で対応しながら色々なクラスの出し物を楽しみ、今は三年生のクラスが企画した喫茶店で一息入れていた。
「ふう…やっと落ち着いたわ…」
「あはは、ケイ、お疲れ様でした」
香織の向かいに座るケイは疲れたといった表情を見せるとため息を小さくついたのだが、その様子を香織は楽しそうに見つめていた。
「あのね、ケイ……ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
ふと、真面目な表情になった香織がケイに尋ねると、ケイも釣られて真面目な表情で頷いた。
「ケイって彼氏いる?」
「か、彼氏!? そんなのいないわよっ」
香織の予想外の問いにケイは思わずドキッとしてしまった。
香織は知らないがケイの中身は圭介なのである。
故に彼女との恋愛話はタブーに近いものがあった。
ケイと圭介、この二人が同一人物でありそして圭介は香織のクラスメイトである以上、この話に深入りしない様にしようとケイは必死で頭をフル回転させた。
「……あのねケイ。あたし、最近すごく気になる人ができたの…」
ケイが悩んでいる間に香織が頬を朱く染めながら独り言の様にポツリポツリと喋り出していた。
まずい! これ以上は冗談抜きでまずい!
もはやケイにとってもこの話を聞くのは限界だった。
「か、香織ちゃん、ちょっと待って! 香織ちゃんの話を聞く前に大事な話があるの」
もはや考えてる余裕はないと感じたケイは香織の話を遮ってたのだった。