ケイと圭介の事情(リレー完全編集版)-10
「はーい、OKでーす」
撮影が終わりスタジオにみんなのお疲れさまの声がこだまする。
「か…香織ちゃん」
一言礼を言おうとケイは香織を呼び止めた。
「何? ケイ?」
先程よりも楽しそうな笑顔を見せる。
「ありがと…ね」
「あー…脇コチョ?」
そう言って手をニギニギさせていたずらっぽい笑顔になる。
先程のことを思い出し圭介はゾーっと鳥肌をたてる。
「違…たしかにあれはリラックスしたけども」
「でしょ。よくお姉ちゃんが機嫌悪い時にやるんだー」
そう言われついその図を想像してしまう。
仲良く戯れる美人姉妹。
「ケイ?」
はっ!? トリップしてた。
不思議そうにケイを見る香織。
ケイは軽く咳払いして話を戻す。
「あー…だから…リードしてくれたこと。みんなに迷惑かけることなく撮影終われて助かりました!! ありがと」
「やん。ケイに感謝されるなんてぇ〜本当大好き」
そう言って香織はケイに抱きついてきた!!
うわっ!?
香織に抱きつかれケイは身動きがとれなくなる。
やばいって…ヘルプミー!
ケイが智香を見ると友美と話していて気付いてくれそうにない。
香澄は撮影で使った花をスタッフからもらっていた。
唯一見ていた奈津子はせせら笑っている。
さらには、口ぱくで「ラブラブ」と言ってまるで助ける気配がない。
あんにゃろ…。
「…ケイ胸でかいね。何カップ?」
「え? …ええっ!?」
一瞬、奈津ねぇのことで意識が回らなかったが…今物凄いことを聞かなかったか!?
「何を…」
「あれ? 聞いちゃいけなかった? そういえば智香も結構でかいし…やっぱ遺伝なのかな…」
香織はうぅ〜ん!! と何やら唸り考えだした。
どうやら胸の大きさで悩んでいる様子らしい。
普段女ってこんな会話してんのか? 何カップ? 知らねぇよ…この胸偽モンだもん。
下を向いて自分の胸の膨らみを見てみる。
実際、中に入ってるのは乳がんで胸を切除した人や胸の小さい人とかが使ってるらしいシリコンのパッドで触り心地は本物に近いらしい。
ちなみに俺は本物を触ったことがないので詳しいことは判んないんだけどね…。
ああっ、今はこんなことをのん気に考えてる場合じゃないよ。
この場をどう切り抜けよう。
そんなことを考えつつ、香織の問いにオタオタしてるケイに天の救いかそれとも奇跡か、友美と話をしてた智香が香織に声をかけたのだった。
「香織ちゃん、今から友美さんが車で送ってくれるから急いで帰る準備してだって」
ああ、我が妹よ。
普段は本当に間が悪いのに今日に限って絶妙のタイミングで話の腰を折ってくれた。
良くやってくれた智香、グッジョブだ。
智香に話の腰を折られ残念そうにする香織だったのだが、すぐに笑顔になり「それじゃ、ケイまた会えるのを楽しみにしてるね」と言うと智香達のところへ走っていったのだった。
こうして俺は危機を脱することができたのだが、世の中そうはうまくできてないもので朱鷺塚がいなくなった直後に今度は奈津ねぇが後ろから俺の首に腕を絡ませてきた。
「智香ちゃん達の送りは友美に任せたからケイの送りは私がしてあげようじゃない」
うわっ! この人すでに俺をイジる気満々だよ! 声からしてすっげー楽しそうだし…。
そして予感は的中。
帰りの車中で俺は奈津ねぇに散々からかわれたのだった。
本当にもう、疲れたよ……。