刃に心《第12話・サイレントトランスファー〜無口な転校生》-6
「判った。また、誰かが誘うかも知れないからその時は応じてよ」
そう言って疾風は退却。仲間の元へと帰っていった。
「すまん。やっぱり俺じゃ無理だった」
開口一番、疾風は戦況を報告した。
「いや…かなりいい線いってた」
返って来たのは意外にも称賛の言葉だった。
「…は?いやいや…ほとんど会話成立しなかったんだけど…」
「他の奴は全く成立しなかったんだぞ。それに比べたらほとんどはかなりマシだ」
「GJ!疾風、刃梛枷ちゃんがあんなに喋るのはレアだぜ。ナイスアシスト!後は俺に任せろ!ゴールは決めてやるから!!」
「でも疾風君、黒鵺さんに気に入られたみたいだねぇ♪」
希早紀の一言。
同時にピキッと硝子に亀裂が入ったような音がした。
「恋かもね」
「愛かもね」
「おぉ、もしかしたら一目惚れとかぁ?」
希早紀と間宮兄弟が嬉しそうにしている。
「は、疾風は…」
「んな訳無いよ」
楓が言い掛けたのとほぼ同時に疾風も言った。
「最後の方はちょっとイラついてたみたいだし」
そう言うが、希早紀の口はますます嬉しそうに歪む。
「それはますます怪しいねぇ♪」
「確かに。黒鵺が感情を見せることなんて無かったからな」
「じゃあ、疾風君が先陣をきって黒鵺さんに話しかける係に決定♪」
「それはいいな」
武慶もこれに賛同。
「ちょっと待って下さい…」
疾風は何とか止めようとした。だが、きゃいきゃいとはしゃぐ希早紀と間宮兄弟を止めることは出来なかった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「何で俺が…」
横断歩道前で疾風はがっくりとうなだれた。
「成り行きだ」
「てか、シイタケやってくれよ…委員長だろ」
同じく隣りで信号が変わるのを待っている武慶にジト〜っとした視線を投げる。
「まあまあ…明日購買でなんか奢ってやるから」
「……はぁ…」
こんなことで釣られる自分が情けなく感じた。
目の前をビュンビュンと車が通り過ぎる。
長いな…と思った時。