そんなふたり-2
「それだって君と僕の意見がいつもいつも決まって違ってるなんてありえないじゃないか!!それに君は僕と違って左利きだ!!」
もはや、わけがわからない。
「おまけにあたしは内蔵もあなたと左右対照だわ。心臓が右胸にあるものね。」
女はむしろ、少し楽しそうだ。というか、そんな珍しい人種がいらっしゃるとは。
「君はいつもなにかを選ぶとき僕が選ぶのを待ってから、必ず僕と違うもの選ぶじゃないか!!…そんなに、僕といっしょにいるのが嫌なのか…!?…くそぅ…僕は、こんなに君が好きなのに…!」
…な、泣いてる…なんて痛い!
「あたしはあなたが嫌いよ」
女は平然と言ってのけた。
ごつっ。クリティカルヒット。致命傷は確実。…もっとも始めから頭のほうは致命傷といえば致命傷か。
苦悩に満ちた、なんともまぬけな男の顔。
「…くぅ……こんなむやみやたらにあまのじゃくな君なんて…もう、君なんて嫌いだ!!」
「あら、あたしはそんなあなたが好きよ?」
…
数秒の静寂。
しばらく見つめあうと、男の目から熱い、大粒の涙がこぼれる。
「…ナオミ…」
ちなみに、女の方はあいかわらず、いたって温度の低い冷静な表情である。
しかし、男にはそれが見えておかず、代わりにドラマチックなキラキラの風景が映っているらしい。きっと男の目に映る女の顔は、うっとりと男を見つめていることに違いない。ふたりは抱き合い、そっと甘いくちづけを交わす。
間もなくその部屋のカーテンが閉められるのを見届けた近所の野良犬が、アスファルトにつばを吐き捨てましたとさ。
おしまい。