「あのときあいつがやってきた エピ1:開始」-1
ひとりぼっちの夢をみる
かならず何かに縛られている
それは制服であったり、視線だったり、あるいは関係性だったり、言葉であったり
何も縛られない世界などありえないし、まさしくそれを混沌と言うのだろう
近所に住むあいつが天才らしい、とは薄々感じていたよ。
うん、天才だ。
わかった、それはわかった。
でもね、これはいくらなんでもないんじゃないかなぁ?
「人工知能搭載人助けロボット。自分で考え、学習し、行動するわ」
と奴は言った。
外見ははっきり言って夏休みの工作レベル。
バケツをひっくり返したようなボディに、飾りみたいに乗っかったアタマらしきもの。手足は…なんだこれ?わりばし??
「外見は気にしないで、これは仮の姿なの」
「へぇ、じゃあ猫型になったり美少女になったりするの?」
「あんたがそうしてほしいなら考えないでもないかな」
ふぅん、と俺はこの人助けロボットとやらをあちこちひっくり返しながら観察した。
弱々しい接着がなんとも心細い。
んでこいつ…ああややこしい、秋津はきっと真っすぐこっちを見て言い放った。
「データがほしいの。この子あんたんとこ置いて」
くもりのない目、研究材料にわくわくしてる科学者の目というか…。
「置いておくと言っても…部屋の隅っこに置いとけばいいのか?」
母さんに間違えて捨てられなきゃいいけど。そうなっても俺を恨むな。
「目につく所ならどこでもいいわ」
それじゃ、あたし忙しいから、と秋津はロングヘアーをひるがえして、さっさと隣の自宅へ帰っていった。
このよくわからんものを残して。
とりあえず部屋に運んで、しばらく静かにそれを眺めていた。
何が人工知能搭載人助けロボットだよ。
たかだか中学生女子がんなもの作れてたまるか。
笑い飛ばしてやろうとしたけれど秋津が真剣な表情をしていたので、それは気がひけた。
昔からいろいろ電池とかパソコンとかちょこちょこ作ってる奴だったけど、さすがにこれはね。
「あほかってんだ」
壊れても哀れだし、丁寧に机の上に置いてやった。