「あのときあいつがやってきた エピ1:開始」-2
そういえば名前あったっけな。
「AKITSU2007号だったか」
立派なんだかそうじゃないんだかよくわからない名前だ。
名前をつぶやくと妙に笑いがこみあげてきた。
あいつもけっこう子供な所があるじゃないか。
ひとしきり笑っていると、カッターで切れ込みを入れたような目がチカッと光った。
「お?」
豆電球ぐらいは仕込んでおいたみたいだな。
「音に反応するのか?」
ためしに2・3回手を叩いてみたが、反応はない。
あーと声を出してみても何もない。
まあ、たぶん運ぶ時にどっか触ったんだろ。
秋津のことだから、他にも何か仕込んであるかもな。電卓とか。
「隆義ちゃーんごはんよー」
と母さんが呼ぶので、俺は部屋を後にした。
いや、しようとしたのだが。
机の上の奴がカタカタ震えだして、
「タ・カ・ヨ・シ・タ・カ・ヨ・シ…」
映画で聞くような機械声でつぶやきはじめた。
言葉に反応するのか?
だとしたらかなりすごいじゃないか、秋津。
「ハジメマシテ」
震えが止まって、
今度は幾分かなめらかに発音した。
「はじめまして」
少しだけ興味がわいたんで、律儀に返してやることにした。
「ワタシハAKITSU2007。アキツハカセにツクラレタ人工知能搭載人助ケロボット」
「ぷっ、『アキツハカセ』だって」
これって秋津が入力したんだよな?
何が博士だよ。
「ゴ命令ヲ、マスタ」
「命令ねぇ…」
「ナンデモドウゾ」
よし、まったく想定できないような命令だしてやろうか。
「三回まわってワンと言って」
どうだどうする?
「ヤだ」
「…」
「…」
「えーと、挨拶してみてよ」
「ヤだ」
「…」
「じゃあ…」
「ヤだ」
「……」
秋津…ッ!
全部やだで済ます気か、んな手抜きアリかよ!!
人助けロボットじゃなかったのか!
ものすごい勢いで脱力した俺は、二の句がつげなかった。
よく考えてみたら?これでもとてつもなくすごいんだろ。