白い幸福-1
カチッ―…カチッ―…
ブォー…ブォー…
秒針の音に、部屋を暖めるストーブの音。
今、この空間に響くのはただそれだけ。
「あ、悪りぃ」
こたつの中で当たる彼の足と私の足。
定番だけど、こたつの上には蜜柑なんか置いてみたり…。
「鍋食いて〜」
「あ、いいねェ」
「乃衣(ノイ)買って来て」
「は?嫌だよ。理一(リイチ)行ってきてよ」
「外寒いじゃん」
自分が言い出したくせに文句を言う。
そんな理一とは3年の付き合いになる。
お互いマイペースな性格だから、こうやってこたつに蜜柑でぼーっとするのは何てことない。
ただ、最近はすべてが普通のことになってしまった気がする。
「あ、お前もうすぐ誕生日じゃん。何欲しい?」
「んー…GUCCIのバック」
「お前遠慮ねぇな〜」
「じゃぁ、GUCCIのストラップ」
付き合い始めの頃は、何が欲しいなんて聞かれても「え、いいよ!」とか遠慮したり、「何でもいいよ」とか任せてみたり…。
なのに最近は欲しい物は欲しいと言ってしまえる。
「チャンネルかえていい?」
「どーぞ」
理一は気分良さそうにリモコンに手を伸ばす。
「蜜柑いる?」
「おぉ、さんきゅ」
二人して蜜柑を食べながら、同じテレビを見る。
同じところで笑う。
昔はこんな些細なことが嬉しくて、幸せだった。
今では普通のこと。
人間の"慣れ"って怖い。