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『――ガシャン』
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『――ガシャン』-2

飛び降りてから3秒くらいだ。重力は俺を引き込むように強く、さらっていく。俺は思っていた。
――つまんねーからだよ。
――こんな世界。

――だから死んでやるんだ。

昔からずっと。なにかが壊れた日からずっと俺は思っていた。親父の拳は心も体も痛めつけ、悲壮な母の姿にいつも俺は泣いていた。俺はずっと死にたかった。

一瞬だか太陽の光が見えた。一瞬。……その光はなんだか俺にとって眩しすぎた。俺はずっと、ずっと闇にいた。太陽の光はもう俺には合わない。…天国や地獄はあるんだろうか?きっと俺は地獄だろうな…。


――今ごろ、親父はフラフラしてるんだろうな。

――今ごろ、母さんは泣いてるだろうな。


俺は近づく地面に恐怖し、気絶した。




『次のニュースです。〇〇市〇〇町で飛び降り自殺がありました。遺体は――』
『ピッ』

女はテレビを消した。ひどく疲れているようだった。…女はテーブルに置いてある一枚の紙を手にとった。
『今の世の中、表と裏があるんだ。もう母さんや親父や俺は壊れちゃったんだ。裏の闇にずっといるんだ、これからも。……二度と……表で光を浴びる事はないんだ。…だから俺は死ぬ。』


今は亡き息子の遺書を握りしめ、女はただ震えていた。


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