まるでたいらかな乳房-4
彼の柔らかい耳が目の端で、僕に欲情しているように見えた。
白い入浴剤が入っていて、彼のペ○スの具合はわからない。
見えるのはピンク色の乳首ぐらいまで。僕と同じように、膨らみのないまったいらな乳房。
トリートメントをなじませた上からサランラップを巻いて、パックする。
スルスルと彼の頭は巻かれてゆく。
仕上げに熱いお湯で絞ったタオルを、サランラップの上から巻いた。熱でトリートメントの浸透がもっとよくなる。
「終わったよ。後は何分かこのまま置いて、流せばいいんだよ」
僕は自分の手をぬるま湯ですすぎながら彼に言った。
水が流れる音だけが響いて返事はない。
「どうしたんだよ。トリートメントはもう終わったよ。」
ちゃぷんちゃぷんとバスタブのお湯に、小さなミルククラウンが姿を表し、波紋を広げる。
見ると彼は泣いていた。
「なんで泣いているんだよ??」
僕は混乱したフリをしてそう尋ねた。
混乱なんかしていないけれど、混乱しているふりをする必要があったのだ。
僕らが引き返す道を用意するために。
「僕が本当にしてほしい事はトリートメントなんかじゃないんだ。」
彼は重い口を開いてそう言った。
目はうさぎのように赤く潤み、体がいつもより一回り小さく見えた。
「じゃあ何がしてほしいんだよ…?」
僕は呆れた口調でそうささやきながらも、ゆっくりと近づいて、泣いている彼にそっと口づけをした。
女の子より、堅くて臭い唇。
まわりにはうっすらひげが生えている。もちろん僕にも生えている。
彼は僕の首に腕をまわして、もっと熱烈なキスを要求してきた。
女の子とちがって一つ一つの動作が強すぎて痛い。
彼は風呂から立ち上がると濡れた体を僕に押し付けた。僕は彼の背中にそっと手を回しやさしく抱きかかえた。
彼の口の中は暖かだったが、頬の内側や舌さえ堅かった。
歯茎に覆い被さるように舌を這わせたがやはり苦い味がした。さっき一緒に食べたポテトチップスやコーラの汗漬けみたいな、一生に一回体験しなくてもいいような味。