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ココロ・ココ
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ココロ・ココ-1

私はただ好かれたかっただけ
なのに、私は皆とは違ったみたい
だから−
 
 
「−春奈さん?聞いてる?」 
ハッと我に帰る。
ここは、最寄りの駅から五つ離れた所にあるカラオケ屋だ。高校生になったばかりの私にはこんな距離でも遠出になる。
今、大学生らしい男の人と二人きり。
でも、私達は歌ってもいなければ笑ってもいない。
 
「えっと、何の話しでしたっけ」
「やっぱり聞いてなかったんだ、方法だよ、致るまでの手段。」
 
穏やかな声、まるでこれから起こる事が当然のように。
この人とは、インターネットのあるサイトで知り合った。
最初は共感だった、でも彼の言葉は私を惹きつけた。携帯のアドレスを交換してからというもの、たくさんの事を話した。
自分は絶対にそうゆうことをする人間ではないと思ってはいても、そんな事を話せる友達がいなかったのも事実だし、辛いことや悲しいことを話せる人がいて嬉かった。
彼は「志倉 大輔 」と名乗った。本名ではないと思ったけど、今の私にはどうでもいいことだった。すれ違う電車のような関係だと思うから。
 
「痛みを感じない方法がいいです。一瞬で。……最初で、最後にしたいから」
「最初ってことはないだろ?そのリストバンドも、ファッションじゃないんだろうし」
咄嗟に、左手首を隠すように強く握る。この人に隠す必要はない、けど、してはいけないことだと思うから、醜い傷だと思うから、ハジだと思うから。
彼はため息をついてから、ゆっくりと聞いた。
 
「最後に聞くけどさ、ホントに死ねるの?」

もう後には引けない。
 
「もう楽になりたい。」
 
「志倉さんが、一緒だから、踏み出す勇気ができました。」
吐き出すように言う私に彼は不思議そうな顔をうかべた。
 
「何言ってるんだい?死ぬのは君だけだよ」
 
この瞬間、私は全身の血が凍りついたかと思った。
話しが違う。志倉大輔とは自殺志願者のサイトで出会った。二人で死のう、そうゆう意味だと思った。自分と『同じ』なんだと思ってた。
裏切られたの?
 
「俺は死ぬなんて言ってないよ。それに俺、死ぬのが恐いんだよ」
そのまま感情に流されて叫んだ。
「なっ!何いってんのッ!?ここまで来て、ソレ!?れだけ……あれだけ思わせて!全部ウソだったの!?何のためにここににきたの!?人生に嫌気がさしたとか言ってたクセにっ!!」
「何の為…か、決まってる、君を殺すために来た。」
 
愕然とした。いや、それよりも恐怖の方が大きい。ここに来た時に見た彼の鞄の中身、たくさんの道具、それが凶器に変わる。死ぬんじゃなくて、殺されるんだ。嫌だ、恐い、怖い。
こんな形で死にたくない。彼はしゃべれない私を一瞥し、講義をするかのように歩きながら口を開いた。
 
「俺だって、誰だって、どんな人生だって、苦悩はある。それに打ち勝って、当たり負けて、生きてくんだ。だいだい、死ぬ人間に一人も二人も関係ないだろ。確かに痛みは恐いな、うん、だから俺がそばにいるよ。それじゃあ、駄目かな?」
 
私の手は震えていた。
でも、怒りじゃない。


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