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刃に心
【コメディ 恋愛小説】

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刃に心《第11話・二人でお留守番》-1

「ふぁああ…」

日曜の朝。疾風は眠そうな目を擦り、大欠伸とともに居間に向かった。

「おはよぅ…」

既に日は高く昇り、おはようが似合う時間帯ではない。

「よく寝る奴だ」

居間で寛いでいた楓が苦笑混じりに答える。

「アレ?みんなは?」

家がやけに静かだと思えば、家族の姿が見えなかった。

「才蔵殿は急な仕事が入った為、夜まで帰って来ぬそうだ。霞はいつも通り、演劇の稽古。奥方殿は日本くノ一の会の会合らしい」
「前二つはともかく…母さんのは一体何?そんな組織、初耳なんだけど…」
「何でもくノ一の地位向上と社会進出を建前とした非合法地下組織らしい」
「非合法地下組織…」
「実態は日々募る不満不平を愚痴る昼食会だそうだ」
「…やってることは普通なんだな」

そう言うと、疾風は大きく伸びをして辺りを見回した。

「楓は今日は何にもないの?」

何気なく疾風が問い掛けた。

「ああ。疾風はどうなのだ?」
「俺も何にも無いな」

疾風がそう言うと、楓は少し嬉しそうに顔を綻ばせた。

「そうか。ならば、今日は夕方まで二人っきりなのだな…♪」

《第11話・二人でお留守番》

◆◇◆◇◆◇◆◇

「疾風、そこの洗濯バサミを取ってくれ」

庭先の物干し竿に洗濯物がかけられていく。

「幾つ?」
「二つだ」

疾風が洗濯バサミを楓に手渡した。

「すまぬな」
「どう致しまして。後、何か手伝うことは?」
「いや、もう大丈夫だ。洗濯物もこれが最後」

楓が最後のシャツを干した。石鹸の匂いが乗った風が心地よい。陽射は暖かく、まさに洗濯日和。

「ふむ。これで良いだろう」

楓が風に靡く洗濯物の列を見て、満足げに言った。

「お疲れ様」
「お前もな」

二人はお互いに微笑んだ。気持ちの良い日曜日。

「気持ちいいな…」
「ああ…」

柔らかい陽射が降り注ぐ。ついウトウトとしてしまいそうな陽気だ。


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