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刃に心
【コメディ 恋愛小説】

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刃に心《第11話・二人でお留守番》-3

◆◇◆◇◆◇◆◇

「昼はどうすっかな…」

この日、一人暮らしをしている千夜子は買い物に来ていた。

「昼は…炒飯でいいか」

昼食のメニューを決定し、手慣れた様子で焼き豚や卵など必要なものを籠に入れていく。

「夕食は肉ジャガ」

三個袋入りのゴツゴツとしたジャガイモを手に取る。

「上手に出来たら、疾風に食べさせようかな♪男は肉ジャガに惹かれるって言うし…♪」

フフフ…と千夜子の不気味な笑みに周りの人が避けていく。

「…疾風が美味いって言ってくれたら…そしたら…そしたら…小鳥遊の奴じゃなくてアタシを選んでくれるかも…♪料理上手な先輩が好きです。付き合って…いや、結婚を……なんてな♪なんてな♪」

恥ずかそうに、だが嬉しそうにクネクネと身を捩る千夜子。それを他の買い物客が不審者を見るような目で見ている。

「よしッ!」

千夜子は他人の目を気にすること無く、妄想全開でガッツポーズ。そして、レジに向かおうとした時だった。

「あ、疾風…」

5m程先に疾風の姿があった。心臓がトクンと脈打つ。
だが、その脈動はすぐに治まった。

「げっ…小鳥遊も一緒かよ…」

疾風の隣りに楓の姿もあった。

「うぅ〜…仲良さそうに一緒に買い物なんかしやがって…」

今までの淡い恋の火が激しい嫉妬の炎に変化する。楽しそうに買い物をする二人を見て、チクチクと心の奥が痛んだ。

「負けるもんか…」

そう呟くと千夜子は小走りに疾風達、正確には疾風に近寄っていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇

「ドーン♪」
「のわッ!?」

疾風の背中を千夜子が軽く押し、疾風が変な叫びとともに転びそうになる。

「ヨッ、疾風♪」
「あ、チョコ先輩。こんにちは」

相手が千夜子だと判ると疾風は頭を軽く下げた。

「…何用ですか?」

対照的に楓は不機嫌になった。

「別に〜。ただ買い物してたら、疾風を見つけたんで挨拶しに来たんだよ」

そんなことを気にする様子も無く、千夜子は疾風の持つ籠に目を向けた。

「疾風も昼飯の買い物?」
「そうです」

籠の中にはうどんが入っていた。

「…うどんか?」
「…そうです」
「……多くない?」
「……多いですよね」

うどんは全部で4玉。二人で食べるのならば、確実に余りが出るであろう。


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