高崎龍之介の悩み 〜初恋〜-8
「やっ……りゅっ……い、あぁあっ!!」
美弥の反応が、さらに乱れる。
「りっ龍之介えぇっ!」
「イキそ?」
ずんっと腰を打ち付けると、美弥は四肢を突っ張らせた。
「きゃッ!?」
ぐりゅんっ、と繋がったままの体を九十度回転させられ、美弥は悲鳴を上げる。
「イク時の顔、見たいから……」
さらに九十度回転し、ようやく美弥は龍之介と顔を合わせた。
「龍之介……」
互いの淫液で濡れた唇を触れ合わせた後、龍之介は力強く腰を振り始める。
「くぅっ!あっ、ふううぅあっあっあぁっ!!」
龍之介の腰に足を絡ませ、美弥はより深い結合を求めた。
凶悪なまでに発達したエラがごりごりと内壁を削るように刺激する事にも慣れ、美弥は存分に快楽を貧っているように見える。
「龍之介っ……龍之介えっ!!」
不意に、美弥がしがみついて来た。
その直後、龍之介の背中に痛みが走る。
美弥の指が、背中を引っ掻いたのだ。
もたらされる快感に、溺れている証。
「やあっ、らめぇっ……あ、あ〜〜〜〜〜ッ!!」
美弥の全身が激しく痙攣し、龍之介を絞り上げる。
「ああっ、美弥ぁ!!」
そして龍之介も美弥の胎内へたっぷりと放出し、果ててしまった……。
数日後。
「……は?」
放課後の校舎裏などという実にオーソドックスな場所に呼び出された龍之介は、口の端を引きつらせていた。
「だから……好きなの。高崎君の事が……」
笹沢瀬里奈は、そう言って頬を赤らめる。
思わず、龍之介はため息をついた。
「噂は本当だったのか……」
「え?」
呟きの聞こえなかった瀬里奈が、不審そうな顔をする。
「ああ、何でもない」
内心で、龍之介は顔をしかめた。
笹沢瀬里奈と付き合った事のある男達が漏らすある噂が、龍之介の耳にはきっちり入っている。
カップルクラッシャー。
それが、笹沢瀬里奈に付けられたあだ名だった。
割といい男に女が付いたと見れば、男に言い寄って来てその仲を引き裂いた揚げ句、即座にポイ。
それが、常套手段だという。
「ね……龍之介君」
潤んだ上目使いで、瀬里奈は龍之介を見た。
「っ……!」
勝手に名前を呼ばれ、全身に鳥肌が立つ。
いくら校内で群を抜いた美少女だろうと、美弥以外の女性が苦手な龍之介にとってはジンマシンが出るだけだ。
ましてや自分の魅力をアピールするそんな上目使いなど、ひたすらに気持ち悪くてしょうがない。
「龍之介君は……私の事、嫌い?」
「大ッ嫌いデス。」
反射的にそう言いかけた口を、龍之介は慌てて押さえる。
相手が誰であれ、むやみに傷付けるのはよろしくない事だ。
「あ〜……笹沢さんの気持ちは、嬉しいよ。でも僕はみ……」
「私がいるものね」
横から聞こえて来た第三者の声に、二人はぎょっとする。
「恵美さん!?」
そこにいたのは兄、高崎竜彦の元婚約者である立花恵美だった。
嫌悪感から、龍之介は吐き気を催す。
「僕と兄は一切用はありませんが、何かご用でしょうか?」
「ええ」
男を蕩かす魔性の笑みを浮かべ、恵美は頷いた。
「龍之介君、あなたをさらいに来たのよ」
「遅いなぁ……」
美弥は、龍之介を待っていた。
『呼び出し食らっちゃったから、公園ででも待ってて』と言われた美弥は、学校から一番近い公園で龍之介を待つ事で合意し、ベンチに腰掛けて出入口を見遣っている。
「……ありゃ?」
見ていた出入口から、笹沢瀬里奈が物凄い勢いで駆け込んで来た。
「いたあーーーッ!!」
瀬里奈は紛う事なく美弥を見て、そう叫ぶ。
「りゅっりゅっりゅっ……!!」
慌てた様子の瀬里奈はうまく口が回らず、まるで壊れかけた機械のように『りゅっりゅっ』と繰り返していた。
「りゅりゅりゅっ……龍之介君がっ!!」
多少は落ち着いたのか、瀬里奈はようやくまともな言葉を吐き出す。
「立花恵美って女にさらわれたのよッ!!」