『 madness 』-2
……♪…♪……
台所から見える電話機が鳴っている。
なんだろ? ストーカーさん? それとも一般人の皆様方?
近づくと、電話機のディスプレイには『子機』の文字。
……あれ? おかしいな。この家にはあたししか居ないのにな……。なのになんで?
『ピーッ、という発信音の後に、メッセージを残してください』
生気のない声が、無人の自宅にこだまする。
『今から殺しに行くからね……。待ってて……』
はは。
あたし、解っちゃった。
あいつは、ストーカーさんはきっと2階にいるんだ。しかも子機が置いてあるあたしの部屋に。
なんでいるのかは解らないけど、あたしが2階に居たときも隠れてたのかなぁ。
……♪…♪……
また電話が鳴る。ディスプレイには警察の番号。
『犯人は2階にいます!! 今すぐ逃げてください!!』
知ってる。
警察も言うのが遅いのよ。
さぁ、凶器は何? 銃? ナイフ? それともロープとか。なんなら灰皿貸すけど。
あたしは玄関に向かい、パパのゴルフクラブを手に取る。
あは。
やるならやるで良いじゃない。見事、返り討ちにしてあげるわ。この武器でね。
たん、たん、たん……
愉快に階段を降りていく足音がする
早速、ストーカーさんのお出ましだ。
さぁ、あたしを殺しに来て。精一杯の対応をしてあげるわ。
でも殺せるかしら? 自分の妹を。
何年ぶりかな。お兄ちゃんが部屋から出るのを見たのは。
しかもその理由が妹殺しだもんね。
あたしもお兄ちゃん大好きだよ。引きこもりになってから全く見てないけど。
そしてお兄ちゃん、あたしに恋しちゃったんでしょ?
ギシ、ギシッ……
さぁ、感動の再会までもう少しね。
お兄ちゃん。もうちょっと遊びたかったな。
でもこれでおしまい。
さぁ、来なさい。あたしの愛しいお兄ちゃん。