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あなたにレケナウルティアの花束を
【初恋 恋愛小説】

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T〜港町に咲くインカルビレア〜-1

私の名前はティア=ルクセンバルト。
年齢は16歳。
どこにでもいるような普通の女の子。
でも私は“普通”の女の子のままで一生を終えたくなかった。
だから私は16歳の誕生日に旅に出た。
“旅”と言えば聞こえはいいが、要するにただの家出だ。
私の村では女の子は16歳の誕生日に大人として認められ、その日のうちに結婚させられる。
もちろん親達に勝手に結婚相手を決められて。
私はこの古いしきたりが嫌だった。
初恋すらまだしたことがないし、結婚相手くらい自分で選びたい。
だから家を飛び出したっていうのもあるけれど、一番の理由はただ単に私の知らない広い世界を見たかったってことだ。
時々村に来る行商人が話してくれる異国の地の話。
山々に囲まれた村の周囲の世界しか知らない私にはどれも新鮮だった。
特にものすごい量の水を湛える“海”というものに私は憧れた。




そして私は今その“海”を目の前にしている。

「わあ、すご〜い!これが海なんだ〜!」

眼前の“海”は私の想像――村の近くの大きな湖よりも一回り大きい――を遥かに越えていた。
視界の180度を少し丸みを帯びた水平線が占めている。
こんな光景を目にできたのだから、あの三ヶ月に渡る旅の苦労も報われるってものだ。
いや、苦労なんて簡単な言葉で済まされるものじゃなかった。
私は辛い旅を思い出すために目を閉じた。




この三ヶ月の間に4、5回は死にかけた。
幸い、食べられる野草やキノコの知識は豊富だったから食料には全く困らなかった……ということもない。
最初の頃は街道沿いに森が広がっていたので、その中で果物やキノコを採ったりできたのだが、道を行くにつれて森は遠ざかり、貧弱な草ばかりが生える平原になってしまったのだ。
しかしこの食料の問題よりも深刻だったのは飲料水の問題だ。
ほとんど突発的に飛び出してきたため、旅に必要と思われる物をほとんど持ってこなかった。
そして持ってこなかった物の中に「水筒」が入っていたのだ。
街道の側に川が走っていた時はよかったのだが、それ以外の時は云々…
その他には野盗に雀の涙程の金品を奪われかけたり、野盗に私の純潔を奪われかけたり、野盗に……
野盗に襲われてばっかじゃん、私…
よくここまで無事に来れたなあ。
どうやって切り抜けたんだろう?
あ、思い出した…
最初に撃退した野盗にその後も度々出くわして、顔馴染みになり、いろいろと助けてもらったり、一時期彼らの仲間にしてもらったりしてたんだった…
お父さん、お母さん、あなた達の娘ティアは一時期とはいえ野盗に身をやつしてしまいました……ごめんなさい………………………………よし、反省終了〜♪
まあ、野盗に身をやつしたのは過去のことだし、それに人は見かけで判断しちゃいけないってことも学べたからむしろよかったと思います。
お父さん、お母さん、私をこんな風に前向きな娘に育ててくれてありがとう!


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