俺と俺様な彼女 〜番外編〜-3
「ご馳走様。」
「姉ちゃん。」
「何?」
「ちょっといい?」
「?」
「どうしたの?」 部屋に二人で戻って尋ねる。
「あのさ、数兄と喧嘩したんだよね。」
「!?何で?」
数兄に聞いた、なんてもちろん言えない。
「見てればわかるよ。」
「・・・」
「あのさ、何があったかはわからないけどもし自分が悪いと思ってるんだったら謝ったほうがいいと思うよ。」
「・・・許してもらえなかったら?」
「あの、数兄だもん。許してくれるよ。」
「違うの。そんな生易しいものじゃないの。」
そりゃそうだろう。あの数兄が怒るんだからよっぽどのことだろう。一回しか会ったことはないけどそれくらいはわかる。・・・一体姉ちゃんは何を言ったんだろう。すごい気になったが自分の命が危ないような気がしたので止めておいた。
「それでもさ、謝ったほうがいいよ。数兄のこと好きなんだろ?だったらこのままはよくないよ。」
「・・・そうね、うん、わかった。」
どうやら私は思っていた以上にいい弟を持っていたらしい。
「今から謝ってくる。」
「今から!?もう八時過ぎだよ。」
「いい。たぶん今行かないと一生後悔するから。」
「家はわかるの?」
「何とかなるわ。」
憲一君に聞けば大丈夫だろう。幸い電話番号は聞いてある。
「じゃあ、行ってくる。」
「・・・わかった。頑張ってね。」
「貴人。」
「ん?」
「ありがとう。」
「姉ちゃん、違和感ありすぎ。」
「ほっときなさい。」
「ただいま。」
私が玄関に来るとちょうどお父さんが帰ってきた。
「保奈美、どこかに行くのかい?」
「うん、ちょっと出かけてくる。」
「気をつけていきなさい。最近は物騒だから。数馬君のことがいい例だ。」
「うん、大丈夫。…お父さん。」
「なんだい?」
「お仕事ご苦労様。」
「!?あ、あぁ、ありがとう。」
「じゃあ、行ってきます。」
「あ、あの保奈美が私にねぎらいの言葉を。…い、いや、そんなはずはない。何か裏があるのか。何かしただろうか?」
「どしたの父ちゃん?玄関で震えて。」
「もしもし、憲一君?」
『はい、どうしたんですか、先輩。』
「あのね、ひとつお願いがあるんだけど。」
『何ですか?』
「数馬の家、教えてくれる?」
『・・・わかりました。じゃあ一旦駅に来てください。俺もすぐ向かいます。』
「ごめんなさい。夜遅くに。」
『いえ、ではまた後で。』
「ごめんなさい、わざわざ来てもらって。」
「いえ、じゃあ行きましょうか。こっちです。」
「・・・」
「・・・」
「あの、月宮先輩。」
「何?」
「数馬と別れるんですか?」
「ううん、謝りに行くの。結果的にそうなるかもしれないけど。」
「・・・たぶん大丈夫ですよ。」
「・・・ありがとう。」