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Kappa
【コメディ その他小説】

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Kappa-1

「急を要する話だ」と一言だけ言われ、私は重役室へ急いでいる。

私の部署に目立ったミスは無い筈だ。

それ以前に目立つような仕事が無いのだから。

となれば兼ねてより狙って居たポストの話か、新しいプロジェクトの話かもしれない。

同期が出世組のエリートばかりだったせいで、日陰部署に座りこまされている私にだって一度位チャンスが来ても良い。

今夜は良い味噌買ってモロキュウで一杯やるか…

男は扉の前で禿頭に浮かんだ汗をハンカチで拭った。

〜・〜・〜・〜



ぺろり、とあたしの尻を河童が撫ぜた。

あたしの顔は化粧品で塗り固められていて、皮膚呼吸を犠牲にする代わり、思わず浮かんだ笑みを張り付けたような困惑へ変えてくれる。

化粧の下の私と同じ厭らしい笑みを浮かべた河童が、
「頑張っているかね、」などとのたまう。

世話に成った担任が、何度も頭を下げて入社させてくれた一流企業。

高校の制服からリクルートスーツに装いを変え、誇らしさと不安を抱えて門をくぐったのは昔話の中の事だっただろうか。

はたまた仕事を抱えて各国を股に掛けるキャリアウーマン、素敵な上司との大人の火遊びは夢物語だったのか。

会社に入って早3年、あたしの頭が覚えたのはコピーを素早く取る方法とお茶っ葉の節約だけだし、あたしのお尻が覚えてるのは河童の脂ぎった手の感触だけ。

言えば更なり、あたしだって初な小娘だったから最初はトイレで泣いたモノだったけど、今じゃ触られ慣れたわ。

挨拶代わりに撫でられて、食事代わりに掴まれて。

スカートの下にスパッツを履いてみたりもしたけど、あまりに待遇が悪くなったので直ぐ止めた。

逆に有給取るときなんかは面積の少ない下着だと満面の笑みで即OKだったりしてね。

ワンタッチのおまけ付きで。

夜中に自宅の電話が鳴って、会社呼び出されたときは何かと思ったけど、まさか押し倒すとはね。

なんとか操は守ったけれど、あれには流石にびっくりした。

個人情報保護なんかそっちのけで、デスクの人間の事なら何でも判るあんたでも、河童がどうやって退治されるかは判らなかったみたいね。

調子に乗った河童は刀で手を切り落とすって決まってるの。
あたしがこのテープと日記で切り落とすのはクビだけどね。

秘伝の薬は要らないわ。
その代わりたっぷり慰謝料戴くわよ。

女はポストの前で再度厭らしい笑みを顔に浮かべ、封筒から手を離した。


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