冬の訪れ、恋の予感?-1
外。喫煙所。ベンチ。
寒さを紛らわすために買ったココアも、もうそんなに役に立たなくなってきた頃、その人はやってきた。
「それ、飲まないの?」
あたしが持っているココアを指差して言う。
「えぇ、もういいんです」
「じゃあそれ頂戴」
「温かくはないですよ?」
「いいよ。甘いのが飲みたいんだ」
「タバコ吸ってるのに?」
「タバコはあまり関係ないね」
苦いのと甘いの。矛盾していると思うのはあたしだけだろうか。
「どうぞ」
言って、そっと手渡した。その人は微かに頬笑んで受け取った。
「ありがとう。はい、コレはお礼」
今度はあたしが受け取る番だった。受け取った物はお茶。買ったばかりなのだろうか。それは温かい。
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
その人は優しく頬笑んだ。
これが、あたしの恋の始まりであったかどうか、それを知るのはもう少し先の話。
心の暖まる、冬のはじまり…。