Mirage〜4th.Weakness-16
「怖い、です」
ようよう、僕は搾り出していた。蚊のなくような、掠れた、弱々しい声を。
「君はよく戦った。怖かったんだろう?」
僕は黙って頷いた。
「なら、休みなさい。今の君は疲れているだけだ。向き合うのが怖い。戦うのが怖い。構いはしないさ。だったら強くなれ。そのために君が今いるべきなのはここじゃあない。そうだろう?」
僕は頷いた──のだろうか。
「なら、行きなさい。君が一番会いたい人のところへ。もしくは、一番近いところへ」
僕は立ち上がった。立ち上がり、出口のドアを目指した。
「先輩」
僕はドアノブに手を掛け、廊下の方を見つめたまま言った。
「ちょっとだけ、靡きそうになりました」
僕はそう言って振り返った。ドアを閉める直前、先輩が笑っているのが見えた。口の端をもちあげ、愉しそうに笑う彼女が。