俺と俺様な彼女 〜7〜-4
「数馬〜。」
「何だよ。何〜?母さん。」
「あんたに客よ。月宮さん。」
こっから俺の行動は早かった。自己最高記録で服を着替え、階段を四段飛ばしで飛び降りた。途中髪を整えながら出ようとする親父をラリアットで吹っ飛ばすアクシデントがあったが俺の部屋から玄関まで過去最速だっただろう。
だが、先輩の顔を見た瞬間、その倍ぐらいのスピードで俺の心は萎んでいった。
先輩は何か思いつめた顔をしており、『ああ、たぶん別れを切り出されるんだろうな』と簡単に想像できた。
「こんばんは。ごめんなさい、夜遅くに。」
「いえ。」
「ちょっといい?」
「あっ、はい。」
「ここじゃ、その、あれだから、どこか他のところで。」
「じゃあ近くの公園に行きましょうか。」
「ええ。」
公園まではお互い何もしゃべらなかった。俺は歩きながら今までのことを思い返していた。ああ、約一ヶ月ちょっと、儚い恋だった。
「・・・」
「・・・」
公園についたはいいがお互い何もしゃべらない。気まずすぎる。俺にどうしろと?しゃべれってか?無理だよ。
「・・・ごめんなさい。」
「え?」
「馬鹿なこと言ってごめんなさい。許してくれるとは思ってないけど、それだけ言いたかったの。」
「そんな、別に許さないなんて。俺のほうこそ怒鳴ってすいませんでした。」
「ううん、数馬は悪くない。」
「じゃあ先輩も悪くありませんよ。」
「・・・」
「・・・」
「私のこと嫌いになった?」
「いえ、そんな。」
「気を遣わなくてもいいのよ。それだけのことを言ったんだし、覚悟はしてるわ。」
「嫌いになんかなりませんよ。俺が好きな人は先輩だけです。もちろんあの告白より前からずっと。」
「・・・数馬!!」
へ?どわぁぁぁーーー!?せ、先輩何してるんですかーー!?いきなり抱きつくとか心の準備できてませんよ、俺は!!反則反則!!レフリー!!
「ほんとに?ほんとにほんと?」
「う、嘘じゃないですよ。当たり前じゃないですか。」
「うっ、ひっく。」
しかも先輩泣いてるーーー!?ありえねーー!!マジかよ!?やっぱ先輩にも涙腺あるんだ。・・・いや、それは当たり前か。
「うっ、うくっ、わ、私も好き。大好き。」
・・・大好き?何が?・・・俺!?俺か!?この状況からして俺だよな。おいおい、マジかよ?槍とか降ってこねえよな?とりあえず降ってきても避けれるように空を見上げて警戒する俺。
だがそんな俺には構わず先輩の言葉は続く。
「ぐす、う、あ、あの娘に数馬はわ、渡したくない。」
・・・おいおい、これ本当に先輩か?先輩の皮かぶった宇宙人じゃねーだろうな。今なら俺信じるよ。それともどっきりか?そこら辺の茂みに憲一とか結衣が隠れてんじゃねーだろうな。…あっ、こっち見てるサラリーマン発見。てめえが仕掛け人かこのやろう。くわっ!・・・あ、逃げた。てことは違うか。悪いことしたな。
「ふえぇぇーん。」
ふえぇぇーん、て先輩、どんだけかわいい泣き方するんですか。どうしよう、髪とか撫でたほうがいいのかな?…おお、先輩の髪さらさらだ。・・・あ、あれ、先輩余計に泣くのが激しくなったような。誰か〜〜。