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悪魔とオタクと冷静男
【コメディ その他小説】

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パシリと文学部と冷静男-11

 長谷部も眼鏡の位置を直しながら歩を再開しつつ、崎守をうながし、
「崎守・刀夜くん、君はもう少し自覚を持ったほうが良いね」
「自覚、ですか?」
「そう。君は文学部の大切な一員だ。我々は全員が揃ってこそ文学部なんだよ。そう思うからこそ皆が立ち止まった。それを忘れて一人で思考に陥るのはいけないね」
「……」
 なぜ、と口を開いたが声が出る前に、
「解るさ。あんな顔をされたならば誰でもね」
 つぶやいて前を行く栗花落たちの背を見る。
「君が思うほど君の存在は影響はないし、あったとしても皆は気にしないだろうさ」
「ひどい言い方ですね」
「だが真実だ。ひとりで思い悩むだけが答えの出し方ではないよ」
 受け売りだがね、と最後に付け足して笑った。
「さあ行こうか。皆を待たせるのは」
「――待たせるのはよくない、ですよね?」
 ああ、と長谷部はうなずき、先を行く。
 きっと大丈夫。
 つばさが言ってくれたことを思い出しながら、崎守は先を行く仲間たちに追い付くために駆け出した。



 皆で高台にある公園に向かう途中。
「そう言えば栗花落さん、今日は何だかいつもより落ち着いてましたね。日光で殺菌されてはしゃぐ元気も出ませんか?」
「そうだねー。どうかしたの? あ、反抗期?」
「ほう、なるほど。つまり大絶賛青い春謳歌中というわけか。記念にひとつ、赤面モノの痛いポエムでもいかがかな?」
「……いつものことだが三人まとめて意味が解らないぞ」
「ほら素直じゃない。やっぱり当たっちゃったねっ。殺菌されて反抗期が赤面モノのポエムを朗読してるんだ」
「え、えっと、大丈夫ですよ栗花落さんっ! 自分はちゃんと味方――、ってなんで素早く視線を逸らすんですかー!?」
「ほざいてろ。別に落ち着いた日くらい普通にあるだろ」
「いっちーの場合は普通なんて言い訳、通用しないと思うけどなー」
「いつも普通の対極を歩もうとしているほどですからねえ。しかも無意識に」
「ああ確かに。栗花落も充分すぎるほど変わってるからな」
「……お前らには言われたくないんだが。鏡見てから言え」
「うん、そしたら自分の顔が映って、その素晴らしさを存分に再確認できるだろうね。それとこれと、どんな関係が?」
「うわぁ、えっと、ここは突っ込みどころですかね? って、はいやっぱりと言うかまったく聞く気ありませんねこの人たちは!」
「……崎守くんっていつも元気でいいよねー。悩みとか無さそうだし」
「いいことだぜ。まあ軽い人生になりそうだが、俺らにゃ関係ないしな」
「それとパシリだけが長所である、と。そう思うと悲しい方ですね。ああ何だか哀れみの涙が」
「笑いながら何を。真実ではあるんだろうが。よし、これから寄るな脳の天気が感染る」
「おやおや諸君、あまり大っぴらに言ったら崎守くんがあからさまに傷つくじゃないか。――陰口は自分が言っているのをハッキリとはバレないように、なおかつギリギリ聞こえる程度にしなくては」
「あ、あからさまな新人イジメがリアルタイムに目の前でっ! あなたたちは鬼ですか!?」
 全員無視した。
「ともあれ幸一郎さん、今日は自分のやるべき職務を怠けていましたからね、エネルギーが余っていたのでしょう」
「ダメだよいっちー、ちゃんと自分のやるべきことはやらなくちゃ。他の人にも迷惑かかるんだよ」
「……何だよ、僕の職務って」
 皆が同時に、

「突っ込み」


(了)


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