恋する少年少女【2】-1
気付けばアタシは、雰囲気のあるカフェにいた。
可愛らしい店員が運んできた紅茶からは、うっすらと湯気がたち、その向こうには大好きな春日くんが見えた。
アタシの胸は鳴る。
……いろんな意味で
春日くんは先程から「勘違いだ」の一点張りだった。
何を話そうにも言葉を遮られ、進まない話にアタシはほとほと嫌気がさしていた。
「ねぇ春日く…」
「勘違いだ」
「あの…」
「お前は勘違いしてる」
「いや、話を…」
「だから誰にも言うなよ」
誰にも言うな
その台詞が、疑惑を肯定していることに春日くんは気付いていない様子。
処理しきれない非常な事態と、話を聞いてくれない春日くんの態度。
困惑がイライラにかわる。
「…じゃあ春日くんは、夏目くんのこと好きじゃないのね?」
アタシの冷めた目が春日くんを映す。
ある意味素直な春日くんは、言葉につまり目を泳がせる。
「すっ…好きじゃ…――」
「嫌いなの?夏目くん…可哀相…」
「〜っおまえが思うような好きじゃないってコトだよ!」
「アタシの思う好きって何さ?」
さらりと聞き返すと春日くんは、うっと言葉を飲み込んだ。
アタシは一言も核心を衝いた言葉を投げ掛けてはいない。
学校で『バレタ』と感じたときから春日くんが否定し続けているため、アタシが真意を突き止めようとしているように感じるが、実際は、春日くん一人が狼狽し聞いてもいないことを否定しているのだ。
おかげで聞かなくてすんだわけだが…
「〜ッいいか?俺は、女が外見だけで男を狙うのが許せなくて怒ってたんだよ!」
声を荒げ、顔を紅潮させながらそう言うと、春日くんはアタシをズバッと指差した。
「あっアタシがそうだっていうの!?」
アタシの気持ちを知っていながらなんてひどい…それ以上に、なんて苦しい言い訳だ、とアタシは心の中で呟いた。
春日くんという人物を、今までアタシは美化しすぎていたようだ。
春日くんは子供っぽい…もとい自分勝手。わがままだ。
「おまえも然りってコトだよ!俺に告ったのも顔!ふられたら次は夏!夏の顔がいいのは認めるけどその考えがきにくわねぇ」
誰か、彼に聞く耳を持つように言ってほしい。
心底そう思った。
アタシは夏目くんをかっこいいと思いこそすれ、好きだという感情は抱いた覚えはない。