恋する少年少女【2】-4
悩んでいたアタシが馬鹿だった。
教室に戻りドカッと席に着くと、アタシは自分と春日くんに腹を立てた。
男好きの女嫌い…そんな男など、さっさと諦めればよかったのだ。
ねばってまで振り向いてほしいような相手ではないコトを今確信した。
いくら何でもあの言い草は許せない。
自分勝手な春日くんを思い、眉間にしわを寄せる。
なんであんな男を…
早まって告白した自分に、さらに深くしわを寄せた。
もうきっぱり諦めよう
アタシはようやく心を落ち着かせると、窓の外でゆっくりと動く雲を見た。
気持ちというものは不思議で
いくら頭でこうしようと決意しても、すぐにはかえれないものである。
放課後。
帰宅する生徒で騒つく昇降口。
アタシは静かに靴を履きかえた。
目と鼻の先には帰り支度をする春日くんと夏目くんがいた。
アタシはとっさに身を縮める。
春日くんは人一倍楽しそうにとれた靴ひもを結び直すと、二人は雑談をしながら校門へと歩みを進めた。
アタシに見せるような顔とは正反対といったような笑顔を、春日くんは終始見せていた。
その顔を見ているとトキメキか辛いのか…よく分からないが胸が痛かった。
アタシは仕方がなく少し離れて後ろをついて歩いた。
裏門から行こうか
いやいや!何でアタシがそんなこと…!
いっそ追い抜かしてやる…等と意気込んでいたら、目の前の二人はいつのまにか女生徒数人に囲まれていた。
雰囲気からしてその女生徒は三年生のようだ。短いスカートをひらひらさせて、黄色い声を上げている。
アタシは春日くん達に気付かれないよう、とっさに庭木の影に隠れた。
そしてチラリと覗く。その姿はかなり怪しかっただろう。帰宅する生徒数人から冷ややかな視線を受けていたが、アタシは無視して春日くん達を見続けた。
先輩達は主に…というかあからさまに夏目くん狙いだった。とおくて何を話しているかまでは聞こえない。
「あっ!あの人…」
夏目くんの正面にいた人の顔を見て、アタシは思わず声を洩らした。急いで口をふさぎもう一度確認する。
そこに見えたのは学校内1の美人とうたわれる先輩だった。
「すご…ライバルがあれじゃ他の子に可能性はないわ」
アタシは小声で感嘆の声を洩らすと、その場にしゃがみこんだ。
自分があれぐらいの美人だったら…そう思うとため息がもれた。
春日くんも振り向いてくれたかもしれない…
アタシはそんな考えを振り払うように、頭を振った。
「裏門から帰ろ…」
実ることの無い恋
それでも諦めがつかない
忘れよう…
そう自分に言い聞かせて、庭木の影から出た。
人一倍甲高い声が聞こえ、ふと振り返ると…
先程まで春日くんも交えて話していた先輩方は、夏目くんの腕をつかみ春日くん一人残し校門のほうに消えていった。