恋する少年少女【2】-3
「なんか暗いな…なんかあった?」
アタシは「別に…」と呟き乾いた笑みを浮かべると、チラリと視線をあげた。
目の前にいるのは、アタシが好きな人の好きな人。
そう見ると何だか腹立たしかった。
しかし何の感情ももたずにみると、彼・夏目くんは煌びやかだった。
整った目鼻立ち。
笑顔を絶やさない明るい性格。
スラッとのびる手足は、程よく筋肉がついていて男らしかった。
男の春日くんが惚れるのも無理はない。こんな完璧な人間と四六時中一緒にいて何とも思わない人がいたら会ってみたいものだ。
そんなことを考えながらアタシはずっと夏目くんを見ていたらしく、ふと我に返った時、夏目くんは複雑そうに笑っていた。
「省吾とは?進展あった?」
夏目くんは親友の恋模様を探るため、はつらつとした声でアタシに訊ねた。アタシは返事の代わりに大きくため息を吐いた。
「そっか…まぁ相談のれることあったら聞くから…」
「…夏目くんて…やさしいね」
「そう?だって笹部サン、すげぇしんどそうな顔してるからさ…」
ここの所、誰にも相談できず一人悩みまくっていた。
夏目くんの優しさに感涙していると、夏目くんの背後に近づいてくる人影に気付いた。
睨みをきかせた春日くんである。
「夏!チャイム鳴るぞ!?」
「お?省吾、いたのか」
夏目くんは話を聞かれていたのではないかと、心配してアタシに目配せした。
近づいてくる様を確認していたアタシは、落ち着いていた。それどころか逆に、春日くんが睨むのでガンを飛ばし返していた。
「夏目くん優しいのねぇ〜。どおりでモテるはずだわ、ねぇ春日くん?」
アタシは春日くんにイライラをぶつけるべく、刺々しく言葉を発すると意地悪い笑顔で春日くんに話をふった。
「そりゃぁオレの親友なんでね。さ、離れろ。おまえから出るモテないオーラに夏が汚染されるだろ?」
アタシ以上に刺々しく言うと、悔しがるアタシをしたり顔で見た。
「いや…オレ、モテな――」
夏目くんが否定するより早くアタシと春日くんの口論は始まった。
「なによ!この勘違い男!」
「うるせぇ、この…えっと貧乳!」
「ひっ貧乳っ〜!?言うに事欠いて人が気にしていることを…!最っ低!!自分こそモテないくせに!」
「なんだとぉ!?」
お互いの目と目から火花が飛び散るのではないかと思うほどアタシと春日くんは睨み合った。
罵声の応酬に黙っていた夏目くんは、アタシ達の睨み合いをみてぷっと吹き出した。
「なんだ、仲いいじゃん」
その一言に「どこが!?」の声がハモって廊下にこだました。