恋する少年少女【2】-2
「確かに顔だけ見れば夏目くんのほうがかっこいいよ?それでもアタシが春日くんに惚れたのは、その一挙手一投足にひかれる何かがあったからだよ!顔とか…そんな簡単な理由で恋したわけじゃない」
勢い良く言い放ったアタシの言葉で、店は静まり返った。
頭にきていたアタシは照れ臭さ等感じず、春日くんをにらみ続けた。
「まぁでも…それももう関係ないですけど。春日くんがこんなだとは思わなかったし?」
『こんな』
もちろん同性愛者ということを非難したわけではない。
頑固でわがままな子供っぽいことをさしたのだ。
しかし、次の瞬間見た春日くんの顔は何とも言えなかった。
泣くでもなく
怒るでもない淋しそうな表情。
無意識のうちに出た言葉が、春日くんを傷つけたことはすぐにわかった。
しかし、アタシが何かを言う前に、春日くんは言葉をしまい込むようにうつむいた。
そして伏し目がちのままカバンを手に取ると、ゆっくり店を出るべく歩きだした。
もう頭がパンクしそうだった。
春日くんを好きな気持ち
失恋
その理由
そして…
春日くんの力ない後ろ姿
後を追って店を飛び出すと、アタシは叫んだ。
「春日くん――!」
振り返る春日くんの目には力がない。
「…春日くんは…一生黙ってるつもり?」
口が
動く
「…お前にゃ…関係ない」
否定もせず肯定もせず
ただそれだけ言って去っていく春日くんをアタシはそれ以上呼び止められなかった。
ずしりと胸にきた
アタシには分からない世界
アタシには関係のないこと
ただそれだけが頭の中に浮かんだ。
「笹部サン!」
数日後の学校。
アタシを呼び止めたのは夏目くんだった。
いつもどおりの爽やかな笑顔が、アタシを照らす。
夏目くんとは対照的な疲れ切った表情で、アタシは一先ずあいさつの言葉をのべた。