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淫魔戦記 未緒&直人
【ファンタジー 官能小説】

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淫魔戦記 未緒&直人 3-7

すぐに、未緒は直人の言葉の意味する所を嫌というほど思い知らされた。
本当に、とにかくどこにでも付いてくる。
買い物などは仕方がないとしても、未緒が家にいた時にすら母の目を盗んで未緒の近くにいる。
トイレに入るのに付いてこられた時はさすがに抗議したが、『そういう時が一番無防備で気を付けなきゃならない瞬間なの。差し当たり、私の事は壁か何かとでも思ってちょうだい』と一蹴された。
特殊な趣味でもない限り、そんな事が続けば普通の神経なら嫌になる。
未緒もいい加減嫌になり、一計を案じた。
トイレはさすがに護衛も堂々と個室に入ってこられない学校やスーパーのものでできる限り済ませ、家のものは使わない。
風呂も銭湯を利用し、最初から護衛と一緒に入るようにした。
人目に触れるという点でこれらはあまりいい顔をされなかったが、未緒の心情は理解してくれているらしくてあからさまな注意はされない。
−護衛が付いて二週間ほども経過すると、未緒の顔には精神的な疲労がくっきりと浮かび始めていた。
「何よ、元気ないわね」
ここは、学園のカフェテラス。
中等部以上の学部には専用の学食があるが、今いるのは全学部共用のカフェテラスである。
普通の人も利用できるが、学園関係者であれば豊富でおいしいメニューを定価より安く利用できるとあって、昼休みには関係者のほとんどがここに通う。
未緒はそこで、神保綾女と同じテーブルを囲んでいた。
今日は、綾女が護衛をする日なのだ。
未緒に対する敵意がすっかり消え失せた綾女は、ものすごく自然に護衛してくれている。
「……つまり、この状態で元気が出せる人だと思ってると?」
「違うの?」
「……」
言い返す気力もなくて、未緒は目の前にあるケーキにフォークを突き刺した。
未緒はハーブティーとサバラン、綾女はコーヒーとレアチーズケーキを食べている。
二人はおやつを食べながら、直人との合流を待っていた。
「冗談よ。たいていの人は護衛なんか付けられたら、落ち着かなくてしょうがないわ」
そう言って、ころころと笑う。
「ま、私はあんたが苦しんでるのを見て楽しませてもらうけど」
「……あのね」
未緒がげんなりしていると直人専用の着メロで、携帯が鳴った。
「もしもし?」
慌てて通話ボタンを押し、電話に出る。
『ああ、未緒?』
慌てた口調で、電話の向こうにいる直人が言う。
「何かあったの?」
『何かあった。大至急来て欲しい所ができたんだ』
「え?」
『今夜グランドホテルで行われるパーティーに、伊織が出る』


裾がくるぶしの辺りまである、フォーマルらしく少し大胆に背中と胸元が開いた、すらりとしたシルエットのドレス。
肌と白さを競い合っているかのような、繊細なレースの手袋。
プラチナにピジョン・ブラッドと小粒のダイヤをあしらったネックレスと、お揃いのイヤリング。
全て、直人が用意させた物だ。
大慌てでホテルへやってきた未緒を待ち受けていたのは、パーティーへ参加するためのドレスアップだった。
直人や綾女も、それぞれが別室で盛装している。
「街のエステティックサロンがメンズエステのイメージキャラクターに起用した伊織を、サロンの営業成功を願うパーティーに呼び寄せたらしい。父の所に届いた招待状を、電話する直前に見たんだ」
ドレスを着込んでから落ち合った場所で、開口一番直人は言った。
「神保の表事業には、僕はさっぱり関与していなかったから……こんなに慌ただしくなってしまった」
申し訳なさそうに、そう付け加える。
−神保家は何代か前に才能を見込まれて婿入りした男が始めた商売が発展して、一般人に見せるための『表』事業となっていた。
そして昔から続けてきた本来の仕事を『裏』として、あらゆる方面に食い込んでいるのだ。
いくら直人が現当主でも現実にはまだ若すぎる年齢であり、表事業で手腕を振るうためにはまだ時間が必要なのである。
閑話休題。


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