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淫魔戦記 未緒&直人
【ファンタジー 官能小説】

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淫魔戦記 未緒&直人 3-6

「茶室にはしばらく誰も近付けさせません。どうぞごゆるりとなさっていって下さい」
中垣はそう言って、茶室から出ていく。
「……それで?」
ややあって、未緒は直人に尋ねた。
「ここに来たのは、わざわざお茶を飲むためじゃないんでしょう?いったい何があったの?」
「今から説明するよ」
直人は重い声を出す。
気を利かせた中垣がお茶を点てて時間を稼いでくれたが、やはり未緒に聞かせるには気の重い話だった。
「最初から……全て話す。だけど、できるだけ取り乱さないで聞いて欲しい」


「君には内緒にしていたけれど、ここ最近僕の許へ君の父親から使いが来ている」
一瞬、何を言われたのか理解出来なかった。
「その使いが君がとどめを刺さなかったあの低級霊の塊だというのも問題があるけれど……持ってきたメッセージはさらに問題がある。それは君がいい具合に育ったから近々いただきに来る、というものだった」
父が……何をする?
あれが……使い魔になっている?
喉がひりついて、言葉が出てこない。
「由利子さんの事には一切触れず、なおかつ今まで放っておいた娘へ『会いに』ではなく『いただきに』来るのだから、どう考えてもまっとうな目的があるとは思えない」
「……」
「そこで夕べのうちに中垣を叩き起こして、色々と方策を練るように頼んでおいた」
直人はため息をついた。
「今朝、君がまだ眠っているうちに練られた方策を聞いた。でも、一番肝心な事を聞いてない」
未緒が喉を鳴らす。
そこに、複雑な感情が籠められていた。
「未緒。君は……父親に、会いたいかい?」
言葉を切って、直人は未緒の様子を伺う。
母を犯し、自分を孕ませた張本人。
『できた子供に罪はない』と周囲の反対を押し切り、自分を産んだために親戚から疎外される母。
様々な思いが未緒の瞳の中に、浮かんで消える。
しばらくして。
「……私」
重い沈黙を破り、未緒が呟くように言った。
「…………父親なんて、知らない。いまさら、どんな顔をして会いに来るというの……?」
未緒は、直人にすがりつく。
「未緒……」
「会いたくなんかない!顔も見たくない!ねえ、直人……私、私……どうすればいいの……?」
未緒が頭をもたせかけた部分が濡れてくるのを感じながら、直人はその肩を抱きしめた。
「大丈夫……僕が守る。父親なんかに、会わせたりするもんか」


「……なるほど。では、父親には会わぬ方向で話を進めるのですな?」
しばらくして戻ってきた中垣は、直人より簡単に説明を受けてからそう漏らした。
「そういう事になる」
ごちゃごちゃに絡まった感情の発露がまだ治まらない未緒をあやしながら、直人はうなずく。
「では、不測の事態に備えて護衛を付けるべきでしょうな」
「揃えられるか?」
「若手の中でも腕利きの連中を男女半々ずつ十四人、今朝のうちに選抜しておきました」
「さすがだな」
さらりと言われた直人は苦笑し、未緒の様子を伺った。
まだ目尻に涙が溜まってはいるが、ぼろぼろと泣き崩れていない分だけいくらか落ち着いたと言える。
「未緒。聞いていた通り、君に護衛を付ける。表立って女性が一人、影供として男性が一人。ローテーションを組んで二人が二十四時間君の傍にいる」
未緒がこくんとうなずくのを確認してから、直人は続けた。
「慣れるまではうっとうしいかも知れないけれど、身を守るためだから我慢して欲しい」


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