ふたり【波乱、のち○○】〜遊輝は愚か者!?〜-4
『グッ』
不意に、俺は肩を掴まれた。体が反応してビクっと震えた。
エリカは左手で遊輝の肩を掴み、額を背中に当てる。
空いている右手が、ゆっくりと振り上げられる。
「 ばか 」
『ドンッ』
「 ばか 」
『ドンッ』
「 ばかぁ‥ 」
『ドンッ』
「なんでわかんないんだよぉ‥」
三度背中に振り下ろされた右手がギュッと反対の肩を掴んだ。
「ユキがどんなにばかでも‥弱くても‥‥あたしはユキと一緒にいれなきゃ嫌なんだよぉ‥」
‥‥‥!
「ふさわしくないとか言うなよぉ‥‥自分の心から逃げてちゃ‥もっと‥弱くなるだけだよぉ‥‥」
俺の“弱さ" が、堰を切って溢れた。
「‥‥うっ‥‥うぁっ‥‥あぁっ‥‥ごめっ‥‥ごめん‥‥おれ‥‥」
エリカは遊輝を後ろから優しく包む。
そして、息を大きく吸い込んだ。
「‥‥よって!」
湿った空気を吹き飛ばすようにエリカが声を上げる。
「東原遊輝の! さっきの発言はっ! 無かったものにする━━!」
エリカの下した判決は、遊輝の誤った考えを優しく切り裂いた。
「お兄ぢゃ〜ん!」
あかねが震えた声を上げながら、遊輝に抱きつく。
「ばか〜、ばか〜、強くなるって言ったばっかりじゃんか〜、びっくりしたよ〜〜」
泣きじゃくるあかね。エリカはあかねの肩に手を添えて遊輝を挟んだ。
遊輝は涙を流しながら、何度も「ごめん、ごめん」と繰り返す。
遊輝の背中でエリカは穏やかに微笑み、静かに目を閉じた。
彼らにとっての本当の波乱は、これでようやく幕を閉じた。