約束-1
落ち葉がたくさん落ちてる。
それはまるで、落ち葉の絨毯みたいで。
『約束』
そろそろ夕焼けも見れなくなる、午後4時半。
『ねぇねぇ!! 佐由ちゃんは大人になったら何になりたいの?』
公園で遊ぶ二人の男女の影。
すべりだいの上には幼稚園の黄色いカバン。
鉄棒のあたりには二人の保護者。
『あたしはねぇ……裕太くんの奥さんになりたいなぁ!!』
『じゃあ、美味しい卵焼きとか作ってくれる?』
『あたりまえだよ!!』
『じゃあ僕は大人になったら佐由ちゃんの旦那さん!』
『約束だよ?』
『けっこんしようね!』
『うん!! 約束!!』
そうして交わした、二人のゆびきり。
何秒も何十秒も、確かめあった。
――――…………
「……ふぅ」
放課後の教室。
委員会の仕事を終えたあたしは、一人教科書やらを鞄に詰め込んでいた。
「いよぉ佐由。なぁにしてんの?」
急に教室の後ろのドアが開き、一人の男子生徒が顔を出した。
「…何って、帰ろうとしてんのよ。何? 一緒に帰ってくれんの? 裕太」
「はっ、何怒ってるの〜? 大丈夫。佐由は強いコだから一人で帰れるよ」
はは、と笑いながら、目の前の椅子に裕太は腰掛けた。
「強いって何よぉ!!」
怒ったあたしは、裕太に向かって拳を振り上げた。
「わっ、ストップ!!」
「言われなくてもやらないわよ」
両手を頭に乗せて、必死にガードしてる裕太を見て、思わずあたしは手を引っ込めた。
「はは、佐由は怖いな」
「もう一回?」
「やっ…止めて」
目の前で怯える裕太を見て、心が締め付けられる。
―叩く気なんてあるわけないじゃん。
「じゃっ、俺校門で彼女が待ってるからさ。気をつけて帰れよ? かわいい女の子♪」
「なっ!! かわいいって……」
「じゃーなー!!」
ガラガラと大きな音を立てて、裕太は廊下の向こうに消えてしまった。