『聖なる日にあなたの全てを』-6
「どうせ今年いっぱいでこのバイト辞めるし、自分から言っちゃおうかと思って。」
そんな事は初耳だったけれど、今はどうでもよかった。
「ごめん、気味悪かったね。気にしないで。今の、俺の独り言。」
あたしの中は、混沌としていた。
驚き、悲しみ、そして愛しさが、ぐるぐると駆け巡る。
まだ熱めのレモンティーをぐい、と飲み干して、彼は空き缶をごみ箱に入れた。
そしてあたしに背を向けてしまった。
「悠子ちゃん気になってるみたいだったから。…今でも俺、ちっちゃい子が泣いてんの見るとああなっちゃうわけ。」
トラウマってやつだね、と一言そう加えた彼の後ろ姿が、あたしの中で渦巻いていた混沌を吹き消した。
「うん、やっと知れた。…良かった。……好きだから。」
彼のダウンジャケットに、思わず抱き着きそうになった。
あたしの最後の一言に、彼が反応したのがわかって、今更鼓動が早くなる。
それからどのくらいの時間が流れたか、あたしにはわからない。
彼が体ごとこっちを向いて、あたしを抱き寄せた。
「……俺ね、悠子ちゃんからそう言われんの、待ってたのかも知れない。」
だから自分から話せたんだろうな、そう付けたした彼の背中に手を回した。
好きな人の傷なら、誰だって理解してあげたいと思う。
出来る事なら1番そばにいて、支えになりたいと思う。
そんな気持ちが叶った事が、クリスマスプレゼントになったのだと、彼の腕の中であたしは思った。