星が降る夜-2
―――ねぇ、アンドロイドも恋をするの?―――
以前クレアが口にした言葉をユダは反芻する。
―――――アンドロイドは『恋』などいたしません―――――――
ユダは即答することが出来なかった。
最新型のアンドロイドの人工知能にさえ、その理由を解析出来るデータは存在しなかった。
この名前の無い感情を (『感情』と呼ぶことが許されるならば )人間は『恋』と名付けたのだろうか?
『死ぬことが恐ろしくはないのですか?』
ユダの問いにクレアは無邪気に笑う。
『わからないわ、まだ一度も死んだことがないんですもの』
対岸のカフェにも灯りがともり宵闇が静かに降りてくる。
『さぁ、ディナーに付き合ってちょうだい。一番上等なワインを開けましょう。
今夜はそばにいてくれるのでしょう?』
クレアは微笑みながらユダの手に触れる。
ユダは、そっと握り返しクレアの暗緑の瞳を真っ直ぐに見つめた。
『はい、貴女のおそばにおります』
――――もしも、
このどうしようもない星で生き延びることができるなら、もし明日という日があるならば、ただ貴女のそばにいさせて下さい。
――――永遠に。
アンドロイドも恋をする。
―――――――――
―――――――
最期の瞬間、僕等は何を想うんだろう?
今夜、宙空から星が墜ちて来る。
――――――――
―――――――
ありがとう
そばにいてね
ありがとう
ありがとう
ありがとう……
― END ―