揺れる-7
受け付けの女の人に迷惑をかけたことを謝って、お礼を言ってから画廊を後にする。もう大丈夫だからと言ったのに、ヤマギシは私の身体を支えながら階段を降りてくれた。
暗い世界から出ると、そこには陽に照らされ、眩しいくらいの世界が私たちを待っていた。
「ねぇ、」
彼の名を、何と呼ぼうか一瞬考える。
「山岸くん」
期待を込めて振り返った彼の顔が少し曇ったのが分かった。
「タケシくん?」
「なんだい?乙香さん。」
それでも不満気に答えるヤマギシが可愛らしく思えて、頬が緩む。
「いつか、あの砂浜に一緒に行ってくれる?」
「…」
「だって感想をまだ聞いてないんだもの。」
「感想?」
「そう。だから行ってくれる?」
その問いを、うつむくようにして考えていたヤマギシが、何かを決心したように顔を上げる。あたしを見つめ返す彼の瞳に、その答えを見つけると、あたしは満足気に微笑む。
「それじゃまず、買い物に付き合ってくれる?」
「いったい何を買うんだい?」
「真っ白いワンピース」